佐賀市に工房を構える、水辺の窯「隆(りゅう)」。その家族による初めての展覧会。「ものづくり家族」の多彩な側面が垣間見えるユニークな展示となっている。
正隆さんは佐賀大学で長く教鞭を取り、現在佐賀大学名誉教授。作家としても日本現代工芸本会員などを務め作陶を続けている。波紋をイメージする確立された作風が、安定感の中に爽やかな景色を感じさせる。
造隆さんの独創的な造形は、東京造形大で学んだ彫刻と、帰郷後の佐賀の名工の元での修業で培われた。ロックな一面をのぞかせる陶板や、白黒のコントラストが楽しい幾何学的な器。遊び心の中に、次代の伝統を受け継ぐ姿勢を感じさせる。
素子さんは七宝焼を出品。銀でつくる繊細なアウトラインに、グラデーション様のガラスを流し込む作品は、サイズ以上の存在感を放つ。奥行き感のある表現には、長く学芸員を務めた確かな目が生きている。
生子さんはいけばなで作品に器に華を添える。野辺の華を題材に、あえて剣山などを使わず、自然の生命力を信じた生け込みで来場者をもてなす。会期中に変化していく花々も見所だ。