イギリスの工芸家で、近代デザインの先駆者として知られるウィリアム・モリス(1834〜96)。今も世界中から愛されている彼の仕事の中でも、今回は、特に「壁紙」に着目します。
産業革命により生活様式が変化した英国の中産階級の住宅では、それまでの重厚な漆喰装飾や壁画、タペストリーなどに代わり、手頃な値段で自由にデザインを選べる壁紙で室内を装飾することが流行しました。1870年代に花開いたモリスデザインの壁紙は、布製品の代用品ではなく、壁紙ならではの機能や装飾性を持つものでした。モリスの「生活の中に美を取り入れる」という考え方は、次第に人々の暮らしの中に浸透していきました。
壁紙の流行とその変遷。モリスの登場。そして、モリス様式のエッセンスがどのように次世代に継承されていったのかを、158年の歴史を誇る英国有数の壁紙会社、サンダーソン社のアーカイブに保管されている約130点の貴重な壁紙や版木により、英国外では初めてご紹介します。