本展では、九州を拠点にし、自らの生きる環境に根差した問題意識を持って主体的な活動を行う同時代の表現者7組を紹介します。
九州には、首都圏のように多くの美術館やギャラリーやアートマーケットがあるわけではありません。しかし芸術は、そのような芸術インフラが整った大都市の環境の中でしか生まれないものではありません。地方にはその地方ごとの芸術の存在の仕方があるはずです。そしてまた九州で生きる作家の価値観や行動原理は、大都市に住む人々のそれに追従する必要はありません。必要なのは、自らの問題意識を持ち、自身を取り巻く環境を見つめて応答していくことであり、その先にこそこの土地が独自の文化を持ち、さらに生み出し続けていく可能性があるのではないでしょうか?
本展のタイトルは、熊本出身の詩人・谷川雁(たにがわがん)の詩論の中の一節を参照しています。
「段々降りてゆく」よりほかないのだ。飛躍は主観的には生れない。下部へ、下部へ、根へ、根へ、花咲かぬ処へ、暗黒のみちる所へ、そこに万有の母がある。存在の原点がある。初発のエネルギイがある。——谷川雁「原点が存在する」1954
自身の存在の核心をなしているものを掴もうと地道な模索を続ける作家の姿勢、あるいは自らのいる環境・状況を見定めた上でそこから自身の表現を立ち上げようとする姿勢を、この「段々降りてゆく」という言葉のイメージに重ねています。
それぞれの場所で展開される作家たちの実践例を通して、九州の環境と状況に即した芸術や表現者のあり方、そして「私たちにとって切実な表現とは何か?」ということを、来場者の皆さんとともに考えられれば幸いです。
関連イベント
■オープニングパフォーマンス
開幕を記念して出展作家の加藤笑平がパフォーマンスを行います。
日時:3 月 27 日(土)11:00-12:00
出演:加藤笑平
場所:館内ホームギャラリー
定員:30 名(事前申込制)
■オープニングトーク
出展作家たちが、それぞれの作品と活動についてお話します。
日時:3 月 27 日(土)14:00-15:30
出演:各出展作家(一部はリモート出演)
場所:館内ホームギャラリー
定員:50 名(事前申込制)
■山内光枝『つれ潮』上映
山内光枝の長編映像作品『つれ潮』を月曜ロードショーで特別上映します。
対馬・曲(まがり)の最後の現役海女が、そのルーツである筑前鐘ケ崎を訪れた数日間。
その一連の過程に寄り添った映像作品です。
日時:4 月 12 日(月)①14:00-15:20 ②17:00-18:20
5 月 3 日(月・祝)①14:00-15:20 ②17:00-18:20
※各日二回上映します。内容はいずれも同一です。
会場:館内アートロフト
定員:45 名(事前申込制)
■CAMK レクチャーカレッジ「企画者の東奔西走と右往左往」
本展企画者が展覧会の事前調査の過程なども紹介しながら、本展についてお話します。
日時:5 月 8 日(土)14:00-15:30
出演:佐々木玄太郎(本展企画者・熊本市現代美術館学芸員)
会場:館内ホームギャラリー
定員:50 名(事前申込制)
[注意]
いずれもイベント参加には事前申込が必要です。以下の事項を記載の上、メールでお申込ください。
①参加希望のイベント名 ②お名前 ③電話番号
申込先:gamadas@camk.or.jp