大川市立清力美術館の発祥の由来は、明治41年、社主であった中村綱次が、主賓室を飾る油彩画制作を画家青木繁に依頼をした事から始まっていく。中村は、当時生活に窮していた青木に対し、酒蔵をアトリエとして与え、経済的援助を行い「漁夫晩帰」や「月下滞船」を制作させた。その後、当時の若き画家たちであった坂本繁二郎や古賀春江らとも交流を深め、彼らの作品はもとより東郷青児や石井柏亭、田崎廣助等の作品を収集し、数多くの画家たちの経済面、精神面の両面において支えてきたのである。その史実からも、清力は、酒造会社である一方、芸術家を庇護し育てるという文化推進の役割を担ってきた歴史があり、その意義は深い。当美術館では、この発祥の出来に基づき「若き作家を育む」というコンセプトをもとに、魅力ある若手作家を紹介する「未来への視点シリーズ」を立ち上げ清力独自の企画展として定着させてきた。本年で5回目を迎えるこのシリーズでは、さらに、個性的で斬新な作家を紹介することで、より充実したアートの面白さを社会に発信し、その開催目的の意義を高めていきたい。
【作家概要】
今回の企画展の浦川大志と名もなき実昌は、インターネットやデジタルデバイスなどの影響下で、変容する現代の知覚・認識のあり方を反映した作品を手がけている作家たちである。浦川は、インターネット上に流通している画像情報を自らの表現に取り込みながら、現代社会の風景を覗く窓として、仮想空間を思わせる絵画作品を描いている。名もなき実昌は、2013年よりTwitterで活動し、インターネット上の人格や画像とアニメキャラクターの類似性をテーマに作品を制作。主にペインテイングやドローイングによって、画像的に解体されたキャラクターが「幽霊的」に偏在するイメージを表現している。浦川は、1994年福岡県生まれ、2017年九州産業大学芸術学部洋画専攻を卒業。福岡県を拠点に活動を展開する若手現代美術作家である。2015年「第24回英展」で優秀賞、2018年の「VOCA展」では、大原美術館賞を受賞。次代の日本美術界を担うホープとして期待されている。作家名もなき実昌については、1994年生まれ。ツイッターによる作品
【企画イベント】
作家によるワークショップ「パソコン画像を用いた心象風景を描いてみよう」
日時:令和3年7月24日(土)・令和3年7月25日(日)14時~16時
場所:三又コミュニティセンター
講師:浦川大志氏
定員:一回につき定員10名 計20名
ギャラリートーク「自己の表現について語る」
日時:令和3年8月22日(日)14時
場所:大川市立清力美術館
講師:藤本真帆氏(福岡県立美術館学芸員) 浦川大志氏(作家)
定員:15名
※新型コロナの対応によつては無観客で開催する場合もあり