ライフ 生きることは、表現すること
熊本市現代美術館
片山真理《you're mine #001》ⓒMari Katayama

【展覧会をめぐるキーワードと概要】

障害/福祉/弱者/マイノリティ/普通/アール・ブリュット/自閉症/切り紙/絵画/家族/

ハンセン病/菊池恵楓園/金陽会/故郷/仲間/サポーター/身体障害/写真/現代アート/

弱いロボット/テクノロジー/不便益/高齢化/自撮り/自虐/笑/SNS/双極性障害/躁鬱/

日課/執筆/料理/陶芸/編み物/ガラス/ギター/いのっちの電話…

【一緒に歩んでいくこと】

本展は、3 人のアール・ブリュットのアーティストの作品から始まる。

藤岡祐機(1993-/熊本在住)、渡邊義紘(1989-/熊本在住)との出会いは、今から 18 年前、熊本市現代美術館の開館記念展「ATTITUDE 心の中のたった一つの真実のために」だ。当時、熊本養護学校の小学部、中学部に通っていた二人は、切り紙作品を出品、その経験がきっかけとなって、今日まで、ずっと欠かす事なく制作を続けている。

建物や宇宙などの精密な色鉛筆画を描く松本寛庸(1991-/熊本在住)との出会いは、当館で 2013 年に開催した「アール・ブリュット・ジャポネ」展への出品だった。その後、若手現代美術作家の登竜門 VOCA 展にも推薦、作品も収蔵した。彼らは家族やまわりの人に支えられながら、ずっと制作をつづけ、海外の美術館でも展示される注目作家になっている。今日も熊本で制作を続ける彼らの日々を、大量の作品や、成長を見守ってきた人たちの声を交えながら紹介する。

【ライフに思いをはせる】

ハンセン病元患者の遠藤邦江さんが、自分の子どもかわりに大事にしてきた抱き人形の「太郎君」に美術館にお泊りしてもらったのをきっかけに、ハンセン病療養所菊池恵楓園絵画クラブ金陽会との交流が始まった。大山清長(1923-2015)、森繁美(1930-2005)、木下今朝義(1915-2014)を始めとする、同クラブメンバーの作品の多くは、一見、どこにでもあるようなアマチュア高齢者の素朴な絵画だ。しかし、描かれた絵の背景を知ると、そこには、故郷や家族と離れざるを得なかった悲しみや、偏見や差別と切り離せないそれぞれの人生のありようが、静かに伝わってくる。当館学芸員時代から、国内外のハンセン病療養所で制作された美術作品の調査を続け、作品を管理する仕組みを立ち上げ、現在も全国各地で展示を続ける蔵座江美(現ヒューマンライツふくおか理事)さんの協力を得て、作品を通して浮かびあがってくる人間の生き方とは何かを、いま一度考察する。

【アーティストが見つめる身体】

片山真理(1987-/群馬在住)は、両足ともに脛骨欠損という主幹を成す太い骨がない病気を持って生まれ、9歳のときに両足を切断した。身体を模った手縫いのオブジェや立体作品、装飾を施した義足を使用したセルフポートレートを制作し、国内外で精力的に活躍する。彼女はその独特な身体をもった一人の女性の人生を、現代アーティストとしての視点からみつめる。本展では《you’re mine #001》(2014年)から新作まで、作家が辿ってきた生の軌跡を作品を通して展観する。

フランスを代表する現代アーティスト、ソフィ・カル(1953-/フランス在住)の≪盲目の人々≫は、生まれつき目の不自由な人々に「美のイメージとは何か」と尋ね、その対話を写真と言葉で表現したインスタレーションである。「私が見た美しいもの、それは海です。視野の果てまで広がる海です。」という極めて視覚的なイメージの言葉で始まるこの作品は、私たちは普段何かを「見ている」と思いながら、実は何も「見ていない」ということに気づかせ、「美」とはその人の生き方や考え方の中から、生み出されてくる事を教えてくれる。

【アートとともに、未来に向かって】

豊橋技術科学大学にあるICD-LAB(Interaction & Communication Design Laboratory)で開発されるのは、自分でゴミを拾うことができず誰かに助けを求める《ゴミ箱ロボット》(2007-)や物語の続きを思い出せず人に尋ねてしまう《Talking-Bones》(2016-)など、思わず私たちが手を貸してしまうような「弱いロボット」である。「不便益(あえて手間をかけるシステムのデザイン)」とも言われるこの考え方には、新たなコミュニケーションの在り方のヒントが眠っている。

熊本の「自撮りおばあちゃん」として知られる西本喜美子(1928-/熊本在住)は、カメラやパソコンを駆使して、高齢であることを逆手にとったユーモアたっぷりの自虐写真を次々と発表し、全国的に知られている。加齢による機能の衰えや弱まりだけに注目するのではなく、創作活動による人との出会いが、その明るい未来志向を支える。

「躁鬱病」とも呼ばれる双極性障害とうまく付き合いながら、多彩な創作活動を行う坂口恭平(1978-/熊本在住)。早寝早起きをして、原稿を書き、絵を描き、料理をつくり、子どもの世話をし、そして携帯電話の番号を公開して死にたい人からの「いのっちの電話」を受け続ける。

 

「自分が自分であるために」何かを作る。あなたにとってそれは何だろうか?

参加アーティスト
藤岡祐機、渡邊義紘、松本寛庸、大山清長、木下今朝義、森繁美、片山真理、ソフィ・カル、I C D-LAB(豊橋技術科学大学)、西本喜美子、坂口恭平
開催情報
日程
時間
10:00–20:00(展覧会入場は 19:30 まで)
備考
会期中は無休
会場
熊本市現代美術館 

 860-0845 熊本県熊本市中央区上通町2番3号

料金
一般1100円、シニア(65 歳以上)900円、学生(高校生以上)600円
団体(20 名以上)  一般900円、シニア(65歳以上)700円、学生(高校生以上)500円
※中学生以下無料
※団体料金は下記をご提示の方にも適用
各種障害者手帳(身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、被爆者健康手帳等。付き添いの方 1 名にも適用)、電車・バス 1 日乗車券等、JAF 会員証、緑のじゅうたんサポーター証
※美術館友の会証をご提示の方無料(1展覧会につき 1 回限り)
主催
熊本市現代美術館[熊本市、公益財団法人熊本市美術文化振興財団]、熊本日日新聞社、KAB 熊本朝日放送
注意事項
[休止するサービス]
○館内の書籍の閲覧(当面の間)
○定例イベント(当面の間)
○アートロフト・会議研修室の貸出
※5月31日(日)までのご予約はできません。
※6月以降については受付を開始しますが、人数・時間等の制限がございます。

[時間制限]
○館内が混み合う場合は、ご利用時間を制限させていただく場合があります。
○まちなか子育てひろばのご利用は子育てアドバイザーが常駐する時間のみとさせていただきます。(10時~15時半)

[安全対策]
○入館時に検温をさせていただきます。
※37.5℃以上の発熱がある方は入館をお断りさせていただきます。
○入館時に代表者の方にチェックシート(お名前・連絡先)をご記入いただきます。
※当館で感染が確認された時などに連絡させていただきます。
○多くの方が手を触れる箇所は、小まめに消毒液による拭き上げを行います。
○受付・チケット販売所等に、スクリーンを設置させていただきます。
○スタッフも手洗いを徹底するとともに、マスク着用と健康管理に努めます。

【お願い】
お互いに「うつらない」「うつさない」、皆さまの安全、安心なご利用のためにご協力をお願いいたします。

○以下の方々は、しばらく来館をお控えいただきますようお願いします。
・37.5℃以上の発熱があるなど、体調不良の場合
・概ね2週間以内に、リスクの高い場所や地域への訪問歴があるなど、ご自身で不安に思われることがある場合
○来館される際は、マスク、ハンカチ、ティッシュなどをお持ちください。
・できるだけ、マスク着用の上、ご来館ください。
咳、くしゃみが出そうな場合は、ハンカチ等で口・鼻を覆うなど、周りのお客様へのご配慮をお願いします。
〇来館中も、こまめな手洗いや手指の消毒をお願いします。
・各所に手指消毒液を準備しております。
・各トイレに液体石鹸を常設しております。
・トイレのハンドドライヤーを一時的に使用中止にしております。ご自身のハンカチ等をご利用ください。
〇他の来館者の方との距離(2m程度)を保ってご利用ください。
・うつらない、うつさない、距離の確保にご協力をお願いします。

詳しくは熊本市現代美術館のホームページをご覧ください。
Webサイト
https://www.camk.jp/exhibition/life/
お問い合わせ
熊本市現代美術館
tel: 096-278-7500 fax: 096-359-7892
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