私は佐賀大学芸術地域デザイン学部の3年生です。2019年9月15日から5日間、学部のカリキュラムの「国内外研修」で東京に行き、美術館や博物館などを見学しました。研修後、見学場所やそこで体験したこと、感じたことを記録する課題に取り組みました。課題の提出形式は文章や写真、映像など自由だったため、私は「Zine」にして記録をまとめました。
Zineとは、自作の文章や絵、写真などをコピー機などで印刷し、ホチキスなどで簡単に綴じた小冊子のことです。起源は1960年代のアメリカとされており、90年代のストリートカルチャー全盛期に西海岸を中心に流行しました。(出典 コトバンク)日本では「TOKYO ART BOOK FAIR」をはじめとした関連するイベントが増え、専門店ができるなど認知度が高まっています。
私は今年度前期科目「情報デザインI」でZineを制作しました。このときの制作を通して、伝えたい情報の選択の仕方や、自分らしさを盛りこめる自由度の高いZineの特徴に気づくことができ、紙のメディアについての関心も深まりました。
研修記録にZineを選んだのは、授業で興味をもったことに加え、文章のレポートよりも読者に多くの情報を受け取ってもらえると感じたからです。作品や展示に対する感想、ふと感じたこと、くだらないけれど省くにはもったいない気づきなど、見学時の体験をそのまま伝え、イラストも載せようと考えました。
Zineの魅力のひとつに、作者が自ら経験した一次情報で主に構成されていることが挙げられます。文章のみでまとめると、第三者を通して得られる二次情報の割合がどうしても多くなってしまいます。そこでZineでは一次情報を多く盛り込んでまとめるように工夫しました。私自身イラストや文字を描くことが好きなため、見てくれる人にとって親しみやすく、体験したことが伝わりやすいものになるよう心がけました。
制作手順はつぎの通りです。
まず、パンフレットやホームページを参考にしながら、見学した場所や展覧会の概要や説明をコンパクトにまとめます(二次情報)。このZineではミュージアムが開館した日と所在地、そのミュージアムについての概要について簡単にまとめました。次に、研修中のメモや写真をもとに場所ごとの振り返り、体験したことや感じたことを書き出していきます(一次情報)。メモや写真をたくさん取っている場所とそうでない場所があり、その時の記憶を辿りながら書き出すのに苦労しました。思った時にすぐメモすることが大事だなとしみじみ感じました。書き出す作業が終わったら、その中から必要な情報と伝えたい情報を選び、余分な情報は削ります。1つの場所につき1ページになるくらいの割合でまとめていきますが、情報が多すぎると文字ばかりになり、逆に少ないと内容が薄くなってしまいます。書き出した情報の中から「どの情報を使わないか」を選ぶのが難しく、この作業が一番時間がかかりました。
内容が決まったら、文章と文章の内容に合うイラストを考えます。情報がわかりやすく伝わるように文章とイラストの割合やレイアウトに気をつけました。文章の原稿とイラストのイメージができたら、A4のコピー紙にボールペンとマーカーで清書して画像で読み込み、アプリで修正・着彩します。最後にプリンタで印刷して、ホチキス留めして表紙をつけて完成です。イラストに色をつける時や最後に表紙をつける時にどんどんZineらしくなっていくのが、作業をしていてとてもわくわくしました。
今回、記録としてのZineを制作して、自分が何を見て体験し受け取ったのかあらためて振り返ることができました。はやく誰かに見てもらいたい!と思いながらの作業はとても楽しく、伝えることの難しさと面白さにも気づくことができました。何か新しいことを体験した時は、これからの自分のためにも、人にうまく情報を伝えられるようになるためにも、どんな形であれ記録に残していこうと思います。