6月14日㈪まで! 日本の美が息づく着物展 見て、触れて知る着物の世界

佐賀市白山のギャラリー遊で、着物アドバイザー・内村眞理子さんの着物展が開催されている。ビル2階の会場には内村さんが全国から集めた夏物・冬物の着物と帯がずらり。

着物の世界は歴史が長いだけに奥が深い。とっつきにくい印象を抱いている人も多いだろう。加えて、「着物を見に行けば押し売りされるんじゃないか」という警戒感もある。心配はいらない。歳月に育まれた高度な技術をたっぷり説明してくれる一方、決して押し売りしないのが内村さんの信条だ。

「買わなくてもいいから、まずは見に来てください。良い着物を覚えれば、店で粗悪品をつかまされることもないんです。高い技術に触れることから着物の知識をスタートさせてほしい」。

内村さんの言葉には、着物の魅力を広く伝えたいという純粋な情熱が感じられる。

ギャラリー遊で毎年恒例といえる展示は、「新品同様の着物や帯が他では手に入らないほどの安価でそろっている」と評判だが、今回はまた特別だ。

卸業者に対して、「コロナ禍の大変な時期に来てくださるお客様のために特別の価格で卸していただけないか」と内村さんとしては異例のお願いをしたところ、快諾してもらえたという。通常12,000円の帯揚げを3,000円や4,500円で、浴衣は1万円を切るものも販売されているとあって、福岡市や大川市の展示は大好評だったそうだ。会場では反物もお手頃価格で手に入る。

内村さんおすすめの逸品を尋ねると、沖縄発祥の3点を紹介してくれた。

上は沖縄の伝統織物・芭蕉布(ばしょうふ)の人間国宝・平良敏子(たいら・としこ)氏の手による帯。麻と比べてもハリがあることや、風通しの良さが芭蕉布の特徴だ。帯1本に芭蕉の木70本を、着物1反に200本を切らねばならない。芭蕉の木が育つまでに3~4年かかり、原料を確保するだけでも大変だということがわかる。

茎の外側の硬い部分は除き、柔らかい部分から剥ぎとっていく。ここから取り出した繊維を紡いで糸にして染色し、織る。写真中、藍色の上に地の色がところどころ出ているのは、糸と糸をつないだ部分。希少な原料を大切する伝統がうかがえる。

同じ沖縄の伝統織物で内村さんが他におすすめする宮古上布(みやこじょうふ)は肌触りが滑らかで、献上品とされてきた歴史がある。苧麻(ちょま。イラクサ科の多年草)の皮を剥いで貝殻を使用して削いで繊維をとり、繊維をより合わせて糸にする。手間をかけて紡がれた糸を染めて模様を出し、砧(きぬた)打ちで仕上げる。打つことで布が強くなり、つやが出る。

上の写真は、琉球紅型(びんがた)の第一人者・城間栄順(しろま・えいじゅん)氏の着物。染めの着物は数多くあるが、砕け散る波しぶきや羽の形など、作業の細かさに注目してほしい。複雑な図柄は技術の高さを証明する。なお、インド藍などの安価な藍でなく本藍で染めているのは、琉球紅型の世界で栄順氏くらいだという。冒頭の写真も同氏の着物だ。鮮やかな色合いにぼかしの技術が映える。

展示は6月14日㈪まで。ぜひ足を運んで、目と手を喜ばせてほしい。

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