『タイポさんぽ改 路上の文字観察』は、グラフィックデザイナーである藤本健太郎さんが日本各地の路上を歩き、その時々で見つけたタイポグラフィについてまとめた本です。自身で撮影した150を超える種類の路上文字を、ユーモアのある文体とともに紹介しています。最初のページから順番に見ることも、パラパラめくりながら気になるものについて飛ばしながら読むことも、どちらもできるような構成になっています。
タイポグラフィとは、印刷物の体裁に影響を及ぼす、文字の書体、大きさ、配列のしかたなど、視覚効果の総称を指します。現代では活版のみならず、写真植字(写植)、電子技術による印字なども含めて文字組版一般の視覚的な処理をいうことが多く、その意味で、文字を生かした「レイアウト」や「グラフィック・デザイン」と同義語として考えられるようになっています。(引用:コトバンク)
本書で紹介されているものの多くは、昭和期の看板、ローカルな商品やお店のロゴ、手書き文字がベースの看板など、コンピューターのフォントにはないユニークで魅力的な文字です。著者の藤本さんは、冒頭部分で「いつでもカメラを持ち歩くこと」「いつもと違う道を通ってみること」など、路上文字と出会うための工夫を挙げています。また「魅力的なタイポグラフィは古い建物に多く見られる」ことにも注目しています。
佐賀でのタイポさんぽ
文字に注目しながら歩いてみると、佐賀の街中にもたくさんのタイポグラフィを見つけることができます。個人的に、佐賀を代表するタイポグラフィは竹下製菓の「ブラックモンブラン」なのでは…!と感じていますが、いかがしょうか?アイスクリームのパッケージで目にする人がほとんどだとは思いますが、路上でも見つけることができますよ〜!
立体的で迫ってくるようなカラフルでポップなデザインが目を引きます。「ブラック」なのに水色の文字だったり、「モンブラン」は一文字ずつ色が異なっていたり、よくよく観察するとこれまで気に留めたことのなかった細かい設定に気づくことができます。丸みのある「竹下の」のタイポグラフィもとってもキュートですね!
タイポの時代性・場所性
路上文字は、会社のロゴ、お店の店名、商品名など様々ですが、本書で紹介されているものを含めて、私たちはその制作者のほとんどを、誰なのか知ることはありません。本書で紹介されている文字、私たちが街で見かける文字のそれぞれに、当時の作り手であるデザイナーの方々がどのような思いで制作されたのか想像してしまいます。
この本は台湾版『タイポさんぽ 台湾をゆく:路上の文字観察』もあり、日本とは雰囲気の異なるタイポグラフィを楽しむことができます。国や地域によって使われる文字や言語・文化も違うので、タイポグラフィのあり方もその国らしい、そこでしか見られないものが見つかります。今は難しいですが、海外に気兼ねなく行けるようになれば、それぞれその国ならではのタイポグラフィに注目して旅をするのも楽しそうです。ですが日本は特に、漢字やひらがな・カタカナ・アルファベットなどいろんな文字・言語が使用されているからこそ、複雑かつ混沌とした中により魅力的な文字が見られるのかもしれません。
路上文字の記録方法
この本の魅力的な点は、文字のセレクトはもちろん、著者が撮影している写真にもあると感じました。その路上文字の良さが最大限に伝わるように撮影されています。
最近は写ルンですなどフィルムカメラ人気が顕著に感じられますが、例えば27枚撮りの使い捨てカメラを用意して、「このカメラは路上文字限定で撮影する!」など、自分で決まりをつくって遊んでみるのも面白そうです。現像したときに様々なタイポグラフィがまとまって確認できることや、どこで見つけて撮影した文字なのか思い出しながら振り返ることも含めて楽しむことができます。また、使いやすいスマートフォンでの撮影も侮れません。写真を撮影した日づけ・時間と共に記録されるのはもちろん、設定しておけば位置情報も共に記録することができます。後で見返した時に、より鮮明に撮影した状況が記録されることがメリットです。 どのようなメディアで記録するのかの選択含めて「タイポさんぽ」の醍醐味といえそうです。
普段歩き慣れた道も、旅行などで一度しか訪れない場所も、路上の文字に注目すると、景色の解像度がぐっと上がり、また違った印象になるのではないでしょうか。散歩が心地よいこの季節に、ぜひ本書と共に「タイポさんぽ」をおすすめします!
おまけ:potari編集部による、佐賀のとあるお店に注目した路上文字に関するレポートもあわせてご覧ください!