「パフォーマンスアート」を知る!やってみる!

佐賀市にあるギャラリーシルクロでは「大人図工」と題し、毎月講師を招いて工作やレクチャーなどのワークショップを行なっています。今月5月14日(日)には「パフォーマンスする」というテーマのもと、パフォーマンスアートについてのワークショップが開催されました。講師は佐賀大学大学院でミクストメディアを専攻している尋木昭帆さん・松延怜亜さん。お二人は2月に同会場にて、SAGA ART WEEK 2023期間中に展覧会『spill the beans』を行い、パフォーマンス作品を含む映像作品などを複数展示しました。
ワークショップ参加者は学生や社会人合わせて9名。内容は「レクチャー+実践」とのことで、「パフォーマンスの実践って一体何をするんだろう⋯?」と内心緊張しながら参加しました。

なぜ「パフォーマンス」がアートなの?
そもそもなぜ絵画や彫刻などではないパフォーマンスがアートとして扱われるのか、現代アートの始まりや美術史の流れを知るレクチャーからはじまりました。
画家はもともと記録のために絵を描いていましたが、写真の登場によって「見たものをそのまま描くこと」以外の表現を探っていきます。芸術のあり方を問う機会となった、既製品を作品として扱ったデュシャンの『泉』をきっかけに、視覚への刺激ではなく思考を生み出すものや、概念・制度を問うような作品が登場したことで、現代アートが発展していきます。その歴史の中で生まれたのが表現者本人の身体を含めて作品とする「パフォーマンスアート」です。
レクチャーでは代表的なパフォーマンスアート作品の映像・写真を見ながら、何が起きているのか、作家がどのようなコンセプトを作品としているのかなどを紹介。一言でパフォーマンスアートといっても、作家によってテーマや規模が全く異なります。

よりよく知るための4つの要素
パフォーマンスアートは、①時間 ②場所 ③身体(パフォーマー)④見ている人(観客)との関係性 の4つの要素で構成されています。作品によっては、観客はただ作品を鑑賞するだけでなく、巻き込まれることで作品の1部になることもあるのだとか。パフォーマンスアートに対して私が感じているわからなさ・難しさは、この4つの要素の組み合わせが無数にあり、想像できない部分が大きいからなのかも?という気づきがありました。

レクチャー後半では、上記の4つの要素を踏まえつつ、尋木さん・松延さんお二人のパフォーマンス作品を紹介。
作品「one day」は、お二人がソファーを抱えて家電量販店の屋上駐車場へ上り、そのソファに座り屋上で過ごすというもの。どの街の風景にもみられる家電量販店を街の象徴とし、その場所で過ごすことで自身の日常の空間をより広い次元で捉える試みです。お店には特に何も言わずに(勝手に!)実践したのだとか。屋上という場所も相まって、開放感のあるのびやかな空気感が伝わってきます。

映像作品「one day」。2月の二人展『spill the beans』での展示の様子。作中のソファに座り鑑賞することができました。

今回参加者が実践するパフォーマンスは、お二人の作品を踏まえて「ワークショップ参加者が椅子を持って街に出て、自分の決めた場所である一定の時間椅子に座って過ごしてみる」というもの。会場から外に出て、いざ実践です!

椅子を選んで実践!
会場から歩いて行ける範囲で30分程度、準備された椅子の中から自分で選んだ椅子を持って、それぞれ座りたい場所を決めて移動します。ほかの人はどこにいくんだろう⋯と周り様子を伺いつつ、いきなり人目につくところは抵抗があったので、まずは佐賀神社裏の松原川の木陰に椅子を設置。この付近はよく自転車で通るのですが、水辺に近づいて座ってみると普段とはまた違った印象を持ちました。

当日は良い天気で野外でのワークショップ日和。用意された椅子の中から私は学校の椅子を選びました。

15分ほど経ち少し状況に慣れてきたので、水辺から離れて人通りのある道に移動!
散歩をしする人、神社へ向かう人、車で通りかかる人など意外と人通りが多く、ちょっと場所を変えただけで、同じ「座る」という行為でも関わる人数や受け取る情報量が一気に変わります。「見ている人との関係性」ってこういうことか〜!と、通りすがる人の視線を感じ緊張しつつ、4つの要素を一通り思い出しながら過ごしました。

やってみてどうだった?みんなで共有
会場に戻って、どこに座って何を感じたか、座っている間に起こったことなどを参加者同士で共有しました。パーキングにある自動販売機の横に座ってみた人、神社の様子を遠くから眺めた人、松原川にある飛石に座ってみた人などなど。座っているうちに最初は気づかなかった花の匂いに気づいたこと、神社で結婚式が行われているのが見えたこと、運転している人にジロジロみられて緊張したことなど、私を含めどの方も外部からの情報を受け取る感覚が研ぎ澄まされるように感じました。

参加者それぞれの状況を講師のお二人が撮影してくれていて、座っている様子の写真を見せ合いながらお話しできたのも面白かったです。「この人は良さげな場所見つけてるな」「この人の選んだ場所は目立ちそうだな⋯」など共有しているうちに、もう少し思い切った場所に座ってみてもよかったのかも⋯?とも思ったり。自分ひとりだと出来ないことでも、複数人だとチャレンジしようと思えるのがワークショップの魅力ですね。

振り返りシート。レクチャーで紹介した代表作品についてや、実践後のポイントがまとまっていて振り返りやすかったです。

まとめ
講師のお二人からは「わからないものに対峙したときにすぐに切り捨ててしまわずに、考えてみたり自分から踏み込んでみるきっかけになれば」「実践はハードルが高かったかもしれないけれど、それぞれが思い思いに座っている様子は優雅で豊かな時間に感じた」とワークショップを締めくくりました。
パフォーマンスアートと聞くと「なんか難しそうなやつだ⋯」と勝手に線を引いてしまっていたのですが、今回のワークショップを通して簡単な歴史や代表的な作品を知ったり、実践して感想を共有することで少し敷居が下がったように感じました。知ろうと思えば書籍やネットでも辿りつける情報ではありますが、現在進行形で学び・制作している講師の視点を交えつつ、対話しながら理解を深めることができたことも良い機会になりました。

次回の「大人図工」は6月18日(日)、オリジナルの筆を制作する「書の時間 筆を作ろう」を開催。
書が好きな人も、よくわからないけど興味がある!という人も、ぜひチェックしてみてくださいね。

▼ワークショップ参加のお問合せ(シルクロ)
場所:佐賀市松原2丁目13-19-2F  TEL:090-8407-9717