田川市美術館で開催中の本展は、2月1日(日)に幕を閉じる。メインビジュアル(大洲大作《光のシークエンスー筑豊》より船尾駅―田川後藤寺駅 2024)に興味をひかれて会場に足を運べば、「今」に没入する喜びを味わえるだろう。
田川市は、炭坑夫で絵師の山本作兵衛を見出した土地だ。作兵衛の残した記録画や雑記帳等はユネスコの世界記憶遺産(正式名称は『世界の記憶』)に認定され、資料的価値を高く評価されている。
田川市を含む筑豊地方で石炭産業が栄え、その後衰退していった歴史は決して「遠い昔」ではなく、現代を生きる私たちとつながっていることを本展は教えてくれる。
会場では作兵衛の作品が来館者を出迎える。迫力の絵と文章をなぞるうちに、炭坑労働者の世界へといざなわれる。過酷な労働環境は、そこで暮らす人々のあいだに厚い人情や連帯感を生んだ。一方でリンチなどの悪習がそこで行われていたことも明かされ、鑑賞する者を動揺させる。
作兵衛の後は、鉱山に魅了されたアーティストや研究者たちの登場だ。画家の富山妙子は、自然と産業が織りなす美を鉱山に見いだした。やがて筑豊に生きる人々の暮らしそのものに着目し、取材を重ねて多くのルポ記事と絵画を残した。朝鮮人の強制労働など負の歴史とも向き合い、「他人事」という態度を排して現実と向き合った画家の姿に心をうたれるだろう。
現代のアーティストたちは、人々の暮らしに思いを寄せつつ、歴史との向き合いかたや自然との関わりかたを模索して「今」という時代に挑んでいる。大洲大作は車窓からの景色を撮ることで時間と空間の流れをうつしとる。山内光枝の映像と笹久保伸の音楽がコラボレーションした作品は、自然破壊が人の営みと表裏一体で進んでいることを訴える。重いテーマを扱いながら、作品の美しさは圧倒的だ。
過去と現在に立脚せずして未来を構想することはできない。仮にできたとしても、身もふたもない空想物語にしかならないだろう。そんなことを考えさせる展覧会である。

