屏風は、「風を屏(ふせ)ぐ」と書くように、衝立などと同様に風除けのための調度品であるとともに自由に空間を仕切り、屋内を彩ることができる装飾品でもあります。屏風は中国に始まり、日本には7世紀にもたらされ、現存しているものでは8世紀に制作された「鳥毛立女屏風(とりげりつじょびょうぶ)」が正倉院に保管されています。
屏風はもともと、1扇(いっせん、1枚)に1つの絵を描いていたものが、鎌倉時代に2扇(2枚)で1図となり、室町時代には1枚の大画面で描くようになりました。折ることで絵に立体感や見え方の変化が生まれ、鳥獣や四季、景観、風俗、歴史事象など様々なものが大画面に描かれて、芸術性を高めていきました。近現代では、岩絵具のような日本の伝統的な絵具を用いる日本画だけでなく、染織や油絵など他の様々な芸術の分野で「折れてひろがる」形態をうまく利用した新たな作品が生まれています。
本展では、当館が所蔵する近世から現代までの屏風を展示します。江戸時代の代表的な画家、長沢蘆雪(ながさわろせつ)による迫力ある《唐獅子図屏風(からじしずびょうぶ)》や、一年を通して耕作する様子を描いた長谷川雪旦(はせがわせったん)《四季耕作図》、有明の海を抽象的に表現した小川泰彦(おがわやすひこ)《染色屏風 深蒼(しんそう)》など、屏風を通してひろがる様々な作品の世界を御覧ください。
主な展示作品
・狩野高信《四季孔雀図屏風》 紙本金地着彩 江戸時代
・長沢蘆雪《唐獅子図屏風》 紙本墨画 江戸時代
・長谷川雪旦《四季耕作図》 紙本着色(金雲・金砂子) 江戸時代
・古川松根《大石良雄宴楽図》 紙本着色(扇面は、紙本淡彩) 明治時代
・長谷川雪塘《能舞図屏風》 絹本著色 明治時代
・高柳快堂《海辺群鶴図》 紙本着色 明治時代
・小川泰彦《染色屏風 深蒼》 木綿地・染色 1967(昭和42)年
(総展示件数 約20件)
関連イベント
(1)博物館・美術館セミナー
日時:令和3年2月13日(土曜日) 13時30分~15時(13時~受付開始)
場所:県立美術館2階 画廊
テーマ:「屏風絵について―描かれた人・動物・風景―」
講師:安東慶子(当館学芸員)
参加費:無料
(2)学芸員によるギャラリートーク
日時:令和2年12月5日(土曜日)、令和3年1月10日(日曜日)各日とも14時~(30分程度)
場所:博物館3号展示室
参加費:無料
※ご参加の際は、マスク着用、手指の消毒など、感染防止対策をお願いいたします。