アルティアム最後の展覧会
過去にアルティアムで展示し、さらなる活躍を続ける7名によるグループ展
三菱地所アルティアムは、最後の展覧会「絶望を覆すことができない恋を正義とせよ、きみが、死んでも残る花。」を開催します。本展は、過去にアルティアムで展示し、さらなる活躍を続ける作家7名によるグループ展です。タイトルは、出品作家の一人である最果タヒが、アルティアム閉館前最後となる本展に寄せて書き下ろした詩の一文です。
アルティアムは、1989年の開館以来、“時代の新しい表現”を紹介する場所として、美術、デザイン、建築、文学、映画、演劇、ファッション、食など、幅広いジャンルの展覧会を開催してきました。特に、現代美術においては、中堅作家の個展や地元作家の紹介に力を入れてきました。
芸術作品には、様々な解釈を可能にする豊かさがあります。個人的体験である鑑賞が、深い内省を伴う時、私たちの世界観は広がります。視野が広がり、着眼点が増え、言葉にならない感覚や考えを認識する機会にもなります。アルティアムがなくなっても、来場者それぞれが獲得した鑑賞体験が、各々の心に長く留まることを願って、本展を開催します。
三菱地所アルティアムについて
三菱地所アルティアムは、三菱地所の文化支援事業の一環として1989年4月12日に開館しました。訪れる人々がアーティストや作品と一体になり、気軽にアート(art) を楽しむことができるスタジアム(stadium) のような親しみやすいギャラリーを目指して「アルティアム(ARTIUM)」と命名されました。
開館当初から現代アートを中心に、デザイン、建築、ファッションなどジャンルを限定することなく、既存の評価にとらわれることもなく、時代を表す様々な芸術表現を紹介してきました。なかでも、独自の表現や思想を確立しつつも、これから先も新たな展開が見込まれる中堅アーティストの展覧会を積極的におこなってきました。“ 時代の新しい表現”を重視する方針には、イムズが従来の商業ビルの枠を超えた「情報受発信基地」というコンセプトを掲げているという背景があります。
人と情報の交流拠点となることを目指し設計されたイムズは、共用スペースが多いことも特徴のひとつです。イムズは、この共用スペースで開館当初から1999年まで、地元作家の公募展「九州コンテンポラリーアートの冒険」(通称コンポラ)をおこないました。これを受けて、アルティアムでは、1991年から1999年まで、コンポラに出展した作家の中から1名を選出し、「イントロダクション」シリーズと題して個展を開催。それ以降、アルティアムでは「For Rent! For Talent!」シリーズ(2005~2009)、「Local Prospects」シリーズ(2015~2019)など、“ 地元作家の支援”企画を断続的に開催してきました。
また、アルティアム開館当時は福岡市がアジア地域を重視した文化政策をおこなっており、野外展示「ミュージアム・シティ・天神」(1990〜2000)でも多くのアジア作家が紹介されていました。アルティアムでも同様に、アジア作家の展覧会を度々開催したことも、特徴の一つです。
アルティアムは32年間にわたり、福岡の文化発信拠点のひとつとして、意欲的な企画を開催してきましたが本展を最後に閉館します。
出品作家プロフィール
塩田 千春 Shiota Chiharu
1972年大阪府生まれ。ベルリン在住。生と死という人間の根源的な問題に向き合い、「生きることとは何か」、「存在とは何か」を探求しつつ、その場所やものに宿る記憶といった不在の中の存在感を糸で紡ぐ大規模なインスタレーションを中心に、立体、写真、映像など多様な手法を用いた作品を制作。
2019年、森美術館にて個展「塩田千春展:魂がふるえる」を開催。2015年、第56回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展、日本館代表作家。
三菱地所アルティアムでは、2012年に「塩田千春 他者である私」を開催。
淺井 裕介 Asai Yusuke
1981年東京都生まれ、東京在住。2003年よりマスキングテープに耐水性マーカーで植物を描く「マスキングプラント」や、滞在制作する各々の場所で採取された土と水を使用し、動物や植物を描く「泥絵」や、アスファルトの道路で使用される白線素材のシートから動植物の形を切り出し、バーナーで焼き付けて制作する「植物になった白線」など、条件の異なったいかなる場所においても作品を展開する。
主な個展に、「淺井裕介—絵の種 土の旅」(彫刻の森美術館、2015-2016年)、「yamatane」(Rice Gallery、ヒューストン、2014年)など。
三菱地所アルティアムでは、2010年に「淺井裕介 ショッピング」を開催。
潘 逸舟 Han Ishu
1987年中国上海市生まれ。現在東京在住。映像、インスタレーション、写真、絵画など様々なメディアを用いてアイデンティティに言及する作品を制作している。社会と個の関係の中で生じる疑問や戸惑いを、自らの身体や身の回りの日用品を用いて、映像、インスタレーション、写真、絵画など様々なメディアを駆使しながら、真摯に、時にユーモアを交えながら表現する。日産アートアワード2020グランプリ受賞。2020年、神戸アートビレッジセンター(KAVC) にて、個展「いらっしゃいませようこそ」を開催。
三菱地所アルティアムでは、2016年に「Local Prospects 2 アイデンティティ」に出品。
津田 直 Tsuda Nao
1976年神戸生まれ。世界を旅し、ファインダーを通して古代より綿々と続く、人と自然との関わりを翻訳し続けている写真家。文化の古層が我々に示唆する世界を見出すため、見えない時間に目を向ける。作品集に『SMOKE LINE』『Storm Last Night』(共に赤々舎)、『Elnias Forest』(handpicked) 等がある。
2010年、芸術選奨新人賞美術部門受賞。大阪芸術大学客員教授。2014年、個展「On the Mountain Path」(Gallery 916)を開催。2019年、「Reborn-Art Festival 2019」(宮城・小積エリア) に出品。
三菱地所アルティアムでは、2018年に「津田直 エリナスの森」 を開催。
山内 光枝 Yamauchi Terue
1982年福岡県生まれ。2010年頃に裸の海女が佇む一枚の古い写真と出逢い、それまで抱いていた日本人像や人間像が溶解していくような衝撃を受ける。その後現在にいたるまで、主に黒潮・対馬暖流域の浦々で滞在を重ねながら、海を基点とした人間や世界のあらわれを母胎に表現活動を続けている。東京ドキュメンタリー映画祭2019長編部門奨励賞受賞。2021年(3/27~6/13)、「段々降りてゆく」(熊本市現代美術館)、2020年「ドマーニ・明日展 plus Online 2020:<前夜>を生きる」(online.domani-ten.com)に出品。
三菱地所アルティアムでは、2015年に「Local Prospects−海をめぐるあいだ」に出品。
鹿児島 睦 Kagoshima Makoto
福岡生まれ。美術大学卒業後、インテリアショップでのディスプレイやマネージメントを経て、現在は福岡市内にある自身のアトリエにて陶器やファブリック、版画等を中心に制作。日本国内のみならず、L.A.、台北、ロンドンなどで個展を開催、近年では世界中にファンが広がっている。陶器にとどまらず、空間への壁画制作や国際的なアートプロジェクトへの参加など活動の幅は多岐に渡る。
MESSUMS London (英)、CHARIOTS ON FIRE(米)、小器(台湾)にて個展を開催。
三菱地所アルティアムでは、2017年に「鹿児島睦の図案展」を開催。
最果 タヒ Saihate Tahi
1986年生まれ。2006年、現代詩手帖賞受賞。2008年、第一詩集『グッドモーニング』で中原中也賞を受賞。2015年、詩集『死んでしまう系のぼくらに』で現代詩花椿賞を受賞。その他の主な詩集に『空が分裂する』『夜空はいつでも最高密度の青色だ』(同作は2017 年石井裕也監督により映画化)。
エッセイ集に『きみの言い訳は最高の芸術』『「好き」の因数分解』、小説に『星か獣になる季節』『十代に共感する奴はみんな嘘つき』などがある。作詞提供もおこなう。2019年に横浜美術館で個展開催。
三菱地所アルティアムでは、2020年に「最果タヒ展 われわれはこの距離を守るべく生まれた、夜のために在る6等星なのです。」を開催。