佐賀県立美術館は開館以来、明治から昭和初期にかけて活躍した佐賀県出身の日本近代洋画の巨匠、岡田三郎助(おかだ・さぶろうすけ、1869~1939)の画業と人物を顕彰してきました。
今回の展示は、岡田三郎助の描いた風景画を紹介します。日本近代美術史において「風景画」という言葉が誕生したのは、1897(明治30)年頃だと言われています。当時、岡田は洋画グループ「白馬会」のメンバーとして活動し、白馬会の画家たちと共に身近な自然や風景を盛んに描きました。それらの作品は清新な感興をもって明治の人々を大いに魅了し、風景画というジャンルが根を下ろす契機にもなりました。
一般的には人物画、特に女性像の美しさで知られる岡田ですが、実は現在確認できる作品の約半分は風景画であると言われています。アトリエを中心とした身辺の光景や風光明媚な旅先の自然など、多彩な風景に心を震わせた岡田は、生涯にわたって風景画を好んで描きました。本展では、印象派風の闊達なタッチが特徴である《桃の林(大石田横手村)》や、熱海で描かれた晩年の大作《伊豆山風景》など、館蔵の風景画の名品16点を御紹介します。瑞々しい色彩が交響する岡田の手による風景の数々をお楽しみください。