作品を作り上げていく過程、着想画(主題、対象、背景)、主題を表現する構図(登場人物、位置関係、個々の姿勢)、全体の構想・バランス、これらの過程を繰り返すことで、自分が求めている画を探し、純化していく。下絵を重ねることで作品は変化し、力強く、生き生きとしてくる。
このような作画の様子を、残されたスケッチ、構想図、下図から読み取って行こうとしたものが今回の企画である。本企画は、昨年11 月ごろに思いついたものであるが、今年7 月にアトリエ倉庫の書棚から出てきた資料に、日展作品の小下図についての恩師立石春美先生からの手紙が見つかった。そこには、指導を仰ごうと送った小下図数枚についての批評が記されており、京吉のうまく表現できるところ、苦労するであろうところ、構造図の好み、構図、人物の姿態について、画面の躍動感を生む配慮など、細かな点まで丁寧な説明があった。
師弟の静かな、真剣なやり取りを思い至らせる文章であった。そこで、この手紙のやり取りによる作画過程を含め、展示を見直すことにしたものである。