4月8日より、大澤弘輝さんの「Who?」を開催します。
大澤さんは、抽象的でありながら、現在を感じられる肖像画を描いています。
彼は、「絵画のための絵画を描く」をテーマに制作し、絵画に向き合うことにどういう意味を見出せるかを試みています。
油彩の肖像画を10 点、小品を多数展示いたします。
「私が初めて観た絵画は、趣味で絵を描いていた父による模写でした。それはジャン・オノレ・フラゴナールの「読書をする娘」という作品です。レモンイエローの服を身に纏い、俯く姿勢で読書をしている女性の肖像画が 物心のついた頃にはすでに実家の居間に飾られており、一人暮らしをするまで毎日生活を共にしてきました。しかし、引っ越しをする際に父がそれを捨ててしまったのです。私は激しい喪失感に苛まれました。その哀情は描かれた女性ではなく、不思議なことに黄色い絵画へ向けたれたものであったことを今でも鮮明に覚えています。日曜画家の父が描いたものは稚拙な模写でありましたが、むしろそうであるがゆえに本物との違いが彼の面影を強く感じさせたのでしょう。ともすると、本を読む女性が父の自画像でもあり、また絵画それ 自体がひとつの肖像画として機能した証拠であったようにも考えられます。 上記の経験は、私に多くの示唆を与えてくれました。絵画に対する「Who?」という問いの答えは一様に言いきれません。平面に描かれた画像の名称だけではなく、そこには捉え難い何らかの存在が同時に潜んでいるのです。
私はそれらの気づきをひっくるめ、まるで生き物のような矩形の物体そのものを肖像とし、画として描き出すことによって私自身を把握したいと願っています。つまるところ「Who?」は自分自身に対する問いであるのかもしれません。」
大澤弘輝