日が暮れるのもどんどん早くなり、お家で灯りを楽しむ時間が特別に感じられるようになりました。今年も秋恒例、フュージングガラス作家久保田トシ子さんの新作展の季節です。
昨年は作家活動40周年を迎え、5年間手掛けてきた作品集 「もうひとつの灯り」 最終章の第5巻目を完成させた久保田さん。今年の1月に永眠されましたことを、ここでご報告いたします。(享年8 5歳)
久保田さんが佐賀県唐津市に、小さなガラス工房 「ムローメ」を構えたのは1984年。1986年に色板ガラスを電気炉で融合 (フュージング)させる技術が初めて日本に入ってくると、最初期にその新しい技法を学びます。それまでとはまるで違う、複雑な色彩と光の層を生み出せる「フュージングガラス工法 」に、彼女は強く魅了されました。
その後、40年にわたり創作活動に全てを捧げ、コンクールや公共の施設、ギャラリーや美術館でのインスタレーションなど、多岐にわたり発表し続けました。とりわけ 「灯り」 には深いこだわりを持ち、溶け合うガラスの優しいフォルムに、物語性のある絵画的な色彩を重ね描き、光の表現を追求しながら、1000点を超える美しい作品をこの世に残しています。
これまで生涯を通じ毎年新作展を続け、フュージングガラスランプという分野の表現領域において、先駆者として駆け抜けた作家人生。
今回は、久保田さんが生前に構想、準備を進めていた最後の展覧会です。暮らしを彩り、日々を愉しむ、素敵な作品を約30点展示販売いたします。彼女が残してくれた、美しいフュージングガラスの世界。
この素晴らしさを、是非皆さまへお届けできましたら幸いです。

