佐賀県立美術館は開館以来、明治から昭和初期にかけて活躍した佐賀県出身の日本近代洋画の巨匠岡田三郎助(おかだ・さぶろうすけ、1869~1939)の画業と人物を紹介してきました。
岡田三郎助は、その人生において2回、欧州に渡りました。一度目は明治30年(1897)からの約4年間で、初めての西洋画研究を目的とする文部省留学生としてパリに渡り、黒田清輝や久米桂一郎の師でもあるラファエル・コランに師事しました。岡田は、コランの元で師の穏健な外光派風アカデミズムの画風を受容するとともに、フラ・アンジェリコやヴァン・ダイクといった過去の巨匠の作品を模写し、西洋画を熱心に学びました。
二度目は昭和5年(1930)、文部省から工芸美術視察を命ぜられて渡欧したもので、フランスのみならず東欧やバルカン半島も巡っています。途上、岡田が多くの古裂(こぎれ)を買い求めたため、この旅は「裂の旅」とも呼ばれています。なお、岡田のアトリエに残された16mmフィルムにはこの旅の様子が写されており、岡田や同行した八千代夫人の様子、あるいは彼らの目に映じた各国の姿を活き活きと今に伝えてくれます。
今回のOKADA-ROOMでは、「三郎助、海を渡る」と題し、「外国」に関わる岡田三郎助の作品を展示します。あわせて、昭和5年の欧州視察の様子を含め、岡田アトリエに残された16mmフィルムを再編した動画を御紹介します。