このたび EUREKA では、9月20日から弥永隆広さんの個展「-narrative-」を開催いたします。 福岡では8年ぶりの個展です。ご高覧いただければ幸いです。
強固で複雑に絡み合う社会構造は、時に人を生かす代償として、何かしらの拘束を強いるように思える。 生と死、善と悪、安息と苦痛。人は常にこの対極の狭間で揺れ動きながら、自らの存在にたどり着くのではないのだろうか。そうした問いから、私は社会と個人の関係をテーマに制作を続けている。
私の作品によく登場する黒いボックスは、社会の堅固な構造を象徴し、その内側でほのかに放たれる青い光は、脆く儚い人の命を表現している。社会と個人を繋ぐチューブは、支えと拘束の両義性の意味を込 めており、目に見えないブラックライトの光が、蛍光顔料を介して儚く美しい光を発する様子は、命の存在を暗示する癒しの光として、観る者を包み込む。これらの象徴を通して、社会に守られながらも、その枠にとらわれる個人の存在の微妙なバランスを探求し、その脆弱さと美しさを描いている。
これら作品は、母の病床で感じた穏やかな光景と、私自身の病床での経験に基づく非常に私的な「narrative(ナラティブ—物語—)」である。それと同時に、個人が社会に支えられつつも、その枠に制約されるという二重性を問いかける試みでもあると考えている。
今回は、過去に同のテーマで制作してきた半立体の作品とそこから平面に再構成したリトグラフ作品。 そしてその版画を基盤にさまざまな素材をコラージュしたオブジェ作品を展示する。 (弥永隆広)
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