紙に油絵具でドローイングをするとき、すんなりと描き進めていくことが大抵できない。線をひとつ引いて、どうもしっくりこなくて描くのをやめ、スケッチブックから紙を切り離してしまう。なにかの形を描いて切り離す。いいところまでいって切り離す。そうこうするうちに描きたいものが明確になり、勢いもついて納得いくものができる。ふと、切り離されて床に散らばった紙切れを見ると、描かれた断片は決してわるくない。捨てるのはもったいない。いつかのために取っておこう。このように残された、描き進めることができなかった絵から、かけらを集めて作品にできないかと考えた。
■木村彩子
画家。植物を中心とする身近な自然を絵画のモチーフとし、蜜難を混ぜた油絵具で制作。
ギャラリー、美術館での個展、グループ展を中心に作品を発表。本の装画や挿絵なども多く手掛ける。
instagram : @saikokimura