熊本市に生まれ、独学で写真を始めた豊田有希(とよだ・ゆうき 1987-)は、フィルムカメラでの撮影、そして手焼きのプリントでの制作を続けてきましたが、1 枚の新聞記事をきっかけに、2012 年から水俣や芦北町黒岩地区に通うようになり、2015 年に単身、水俣市に移住します。
「あめつちのことづて」としてまとめられたシリーズは、豊田が 2016 年から芦北町黒岩地区に通い、農作業の手伝いなどをしながら撮り続けた、畑仕事や祭り、食卓、そこに住む人々のポートレートなどです。昔ながらの素朴な暮らしを送るこの集落では、まだ道のない時代、行商人が不知火海の魚を担いで売り歩き、多く食されていました。
その後、2012年になり、水俣病の症状が住民の多くに出ていたことが判明。当初は救済対象地域から外れていたものの、住民と行商の証言記録が一致し、特別措置法案の対象と認められたのでした。
そのような中、同地区の人口も、他の多くの山間地域と同じように、減少の一途をたどっています。
本展では、現在も集落の暮らしを見つめる豊田の、未発表作品を含む約 40 点(予定)を紹介します。
- 関連イベント
アーティスト・トーク
日時:2021 年 1 月 23 日(土)14 時-15 時 参加無料
場所:熊本市現代美術館アートロフト
要予約
作家本人が作品を通して、水俣・黒岩地区の暮らしについて語ります。
※そのほか、2020 年 3 月に水俣の町を巡るツアーを予定しています。
【同時開催】令和 2 年 7 月豪雨REBORNプロジェクト
本プロジェクトは、写真家・豊田有希が中心となり、令和 2 年 7 月豪雨で水損した八代市坂本町に残るネガフィルムを、クリーニングしてデジタル化し保存、再プリントするものです。
これらは、地元のアマチュア・カメラマン、故・東儀一郎氏らが、昭和30 年ごろから撮影してきた、村の行事や、荒瀬ダム等の風景の写真やネガで、同町のラフティング会社「Reborn」を営むリバーガイド・溝口隼平氏が、資料として譲り受け、これまで整理・保管してきましたが、残念ながらその多くが、水害により水没することとなりました。
この「REBORNプロジェクト」は、それらの水損ネガを、ボランティア作業を通して復活させることで、町の方々を始め多くの方と、川を中心にした地域の記憶を共有することを目指すものです。今回は、プリント展示のほかに、復活した水損写真やネガをまとめた記録写真集を会期中に発行することを目標としています。
※2020 年 2 月半ばにドネーションブック「REBORN」の発行及びトークショーを実施予定。