小泉明郎による話題作を関西以西で初上演
VR(仮想現実)とギリシア悲劇の融合が描き出す「ディストピア 」と「ユートピア」
山口情報芸術センター[YCAM]では、アーティストの小泉明郎(こいずみ・めいろう)によるVR(バーチャル・リアリティ/仮想現実)を用いた体験型の演劇作品《縛られたプロメテウス》の公演を開催します。小泉はこれまで、国家・共同体と個人の関係、また人間の身体と感情の関係について、現実と虚構を織り交ぜたアプローチで作品を発表してきました。演劇、音声、映像など複数の手法を巧みに組み合わせた作品は、国際的な芸術祭をはじめとする現代美術や演劇の文脈でも高い評価を受けています。本作は、古代ギリシアの詩人アイスキュロスによる悲劇「縛られたプロメテウス」が原作となっています。未来を予見する能力を持ちながらも、全知全能の神・ゼウスから火を盗み、永劫の苦しみを味わうプロメテウス。本作の観客は、この神話的時間から発想された近未来の中で、自分とは異なる「他者」の感覚や感情をVRを通じて追体験していきます。人間の知覚を拡張する現代の技術が古典的名作と結びつくことで生み出される本作の体験を通じて、未来におけるテクノロジーや「生」のあり方について深く考えるきっかけとなるでしょう。