佐賀県立美術館は開館以来、明治から昭和初期にかけて活躍した佐賀県出身の日本近代洋画の巨匠、岡田三郎助(おかだ・さぶろうすけ、1869~1939)の画業と人物を顕彰してきました。
岡田三郎助の作品の特色の一つに、色彩表現の美しさが挙げられます。明治27年(1894年)にフランス留学から帰国したばかりの黒田清輝、久米桂一郎と出会った岡田は、彼らの薫陶を受け、外光下での明るい色彩表現に開眼していきます。自身もフランスで学び、色彩に対する感性にさらに磨きをかけた岡田は、黒田らの組織した新風洋画団体「白馬会」に加わり、その優美な色調と気品に満ちた画風で洋画界を牽引しました。岡田の弟子である岩田藤七(いわた・とうしち、1893~1980)は、「私は色が見えすぎてその取捨に困る」と岡田が語っていたことを述懐しています。その言葉通り、岡田の約50年にわたる画業は、色彩への飽くなき探求を通じて、自身の理想美を追い求めることに捧げられた生涯であったと言えるでしょう。
本展では、岡田の用いた色彩に注目し、初期から晩年までの作品にみる色遣いの変遷を、館蔵を中心とした岡田の名品から御紹介します。初期の名作《矢調べ》、岩絵具を用いた《コローの池》、色遣いの洗練を極めた晩年の傑作《裸婦》など15点を通して、岡田の薫り高い色彩表現の世界をお楽しみください。