「welcome in my backyard」とは、倉庫のなかにひそむ多様な価値観にふれる美術を通した展示である。
「倉庫」という場所はブラックボックスのようにその中身は見えなくなっている。もしくは、周到に隠されている。
インターネットで品物を注文して、支払いを完了してから翌日、翌々日には自宅に品物が届く。いかにも現代が魅せる魔法のようだ。
この現代に生まれた未知の場所としての「倉庫」とはどのような場所だろうか。
倉庫の中には、単に見た目の美しい物だけが収まるわけではなく、醜いもの、安っぽいもの、愚かな考え、豊かな想像、あらゆるものが混在している。これが、倉庫の特徴だ。
それらが持つ可能性や価値も、倉庫の中にストックされ、その評価を一旦保留に出来る。
保留するとは、考えをやめることではなく、常に思考を継続するということではないだろうか。
考えをやめないこと、それは物事のオルタナティブな側面を描くことができる美術の一つの側面でもある。
つまり倉庫とは美醜、良・不良、賢愚、を問わずに収蔵する美術館のような場所であり、決してマイノリティやオルタナティブを諦めない抵抗の場所でもある。
そこは明るい陽の当たるような場所ではなく、きっと薄暗くて少し気味の悪い場所だろう。
あらゆるものに対して評価を下し、取捨選択を迫りかけてくる資本や利害から、一歩離れた「倉庫」において、地域において美術が成すことができる役割について考えてみたい。