1968(昭和43)年は、世界の社会、文化において重要な転換期とされています。海外ではベトナム戦争が長期化し反戦運動が高まるなか、パリ五月革命(フランス)、文化大革命(中国)、キング牧師の暗殺(アメリカ)など、衝撃的な出来事が頻発しました。戦後20年を過ぎた日本でも、この時期と前後して成田の三里塚闘争、70年安保闘争など、さまざまな社会運動が激化しました。東京オリンピックを終え、1970年の大阪万博開催に向かって高度経済成長がピークを迎える一方で、地方の過疎化や公害問題のような「社会のひずみ」も表面化します。
この激動・激震の時代、日本の文化形成においても大きな転機を迎えました。「環境芸術」のようにアート&テクノロジーの融合を志向する芸術が萌芽し、その一方で、近代批判、体制批判の視点に立った表現が過熱します。また、演劇、実験映画、パフォーマンス、デザイン、漫画、音楽など、各分野の芸術家たちがジャンルを超えた前衛表現を展開し、なかでもカウンターカルチャー(対抗文化)やアンダーグラウンド(前衛的サブカルチャー)の要素は一部「アングラ」と呼ばれ、日本独特の世界観やライフスタイルを生み出しました。
本展は、千葉市美術館を皮切りに北九州、静岡を巡回します。「1968年」からちょうど50年を経た今年、当時の様相が伝説化される前に、生々しい時代の特徴を現代美術史・文化史の視点から照射しようとする試みです。