福岡市美術館のリニューアルオープン記念展「これがわたしたちのコレクション+インカ・ショニバレMBE:Flower Power」は、コレクション展と企画展という美術館の展覧会活動の両輪をひとつの展覧会として打ち出したものです。リニューアルにより生まれ変わった美術館展示室すべてを用いて、当館の今後の活動のあり方を示す展示を行います。
コレクション展示室およびギャラリーA~Fでは、「これがわたしたちのコレクション」を開催。当館が40年以上にわたって収集してきた約16,000点のコレクションの中から、代表的な作品約250点を一堂にご紹介します。開館以来、最大規模のコレクション展示となります。特別展示室では、英国を拠点に国際的に活躍する美術家インカ・ショニバレMBEの国内初個展「インカ・ショニバレMBE:Flower Power」を開催します。
「これがわたしたちのコレクション」
サルバドール・ダリ、ジョアン・ミロ、マルク・シャガール、アンディ・ウォーホル、ジャン=ミシェル・バスキア、草間彌生といった当館のスター的作家の作品の展示をはじめとして、明治期の洋画からポップアート、そして現代美術にいたるモダンアート100年の歴史をたどる内容の展示を行います。また近年収蔵した同時代の作家の作品もしっかりとご紹介。拡張されたコレクション展示室を十全に生かし、当館の近現代美術コレクションの特徴を余すところなくお届けします。
古美術のコレクションからは、黒田家伝来の宝物や仙厓の書画など福岡にゆかりの深い作品に加えて、電力王・松永安左エ門が蒐集した珠玉の茶道具、さらに中国・朝鮮・東南アジアなどアジア各地の古美術の名品を展示します。また、東光院仏教美術室は寺院をイメージした新たな空間へと生まれ変わりました。重要文化財を多数含む美しい仏像の姿を360度から鑑賞することができます。
室数の増えたギャラリーでは、当館の個性が際立つ「九州」にかかわる5つの特集展示を行います。久留米出身の洋画家で版画も多数制作した「吉田博」、当館が初の回顧展を開催し評価の先鞭をつけた「藤野一友」、戦後の福岡に登場した前衛美術グループ「九州派」、気品と清潔感を兼ね備えた柿右衛門様式の色絵磁器に代表される「九州古陶磁」、日本の仏教美術の源流をたどる「アジアの仏教美術」を、それぞれまとめて見られる稀有なる機会です。
1979年の開館以来、空前の規模のコレクション展。満を持して、お届けします。
「インカ・ショニバレMBE: Flower Power」
タイトルに掲げるFlower Powerとは、「花」と「力」。英国を代表するアーティストであるインカ・ショニバレは、長年にわたって、花をモチーフに用いたさまざまな作品を制作しています。青年期までナイジェリアで過ごしたショニバレは、鮮やかな色と奇抜な柄が特徴的な綿布を作品に用いることで知られています。この綿布は「アフリカンプリント」と呼ばれることがありますが、実はインドネシアのバティック(ろうけつ染め)をもとにヨーロッパで製造され、アフリカに根付いたものです。ショニバレは、「…らしさ」という固定観念に疑問を投げかけ、作品を通してその背景に目を向けさせます。
本展は、ショニバレの日本初の個展であり、花をモチーフとした作品を、代表作とともに展示します。今回、福岡市美術館のリニューアルオープンを記念して、桜をテーマとする新作を発表します。華やかでドラマティックな作品群は、その美しさの先にある、驚きと刺激に満ちた体験を与えてくれるでしょう。