私のシアターシエマ・デビュー ドキュメンタリー映画『主戦場』

「佐賀にいるのに、シアターシエマに行ったことがないんですか?」

佐賀市の街なかにひっそりと存在する映画館、シアターシエマ。佐賀に住みはじめて早2年、その存在は耳にしていたが、私には映画を見る習慣が全くなかったため、これまで一度も行ったことがなかった。そこまで言うのならばと、はじめてこの映画館を訪れることにした。

シアターシエマは、佐賀市松原にあるセントラルプラザというビルの3階にある。このビルは、1階が海鮮料理店、2階がカラオケ店になっていて、外観からは映画館があるようには見えない。エレベーターで3階にのぼり、奥に進むと右手側にシアター併設のカフェが見える。カフェでは飲み物、食べ物はもちろん、映画のチケットも購入可能だ。カフェで買った飲み物、食べ物は、シアター内で映像とともに楽しめる。

チケットを買い、シアター内に入って驚いた。座席の種類が違うのだ。中央の列は一般的な映画館と同じような1人がけの席が並んでいるが、左右の列はソファタイプのシートと1人がけの席が混在している。中にいる観客たちは、カフェで買ったであろう飲み物を飲んだり、映画のチラシを見たりと思い思いに上映を待っていた。初シエマの私も、ひとりそわそわしながら上映を待った。

この日、私が見たのは『主戦場』という映画である。「慰安婦問題」に焦点を当てたドキュメンタリー映画だ。この映画にしたのは、ふだん私が絶対にチョイスしない内容の作品だからである。どうせなら自分からすすんで触れることのないものに触れてみようと思った。

映画は約2時間。あっという間に過ぎ去ってしまった。見ているあいだ、ドキドキしっぱなしだった。この映画の監督が、慰安婦問題について様々な立場の人物にインタビューを重ねていく。ありとあらゆる情報が飛び交い、頭を整理するだけで精一杯だった。知らなかったことが多すぎて、この映画を見るだけでなく、自分でも学ぶ必要があると感じた。いま社会で起きている問題を、いかに他人事のように捉えてきたのかを痛感した。そうした問題について何も知らないこと、知ろうとしないことへの恐怖を感じた。帰り際、ある観客が「これはもう一回見らんばね」と言っているのが聞こえた。その通りだと思った。

こうして私のシアターシエマ・デビューは終了した。この日感じたことを忘れまいと家に帰り、早速ノートに映画の感想を書いた。もちろん映画のチラシは持ち帰った。家に帰ってもしばらく興奮冷めやらぬ状態だった。「また絶対行こう!」と決意し、その翌々日には、ふたたびこの映画館を訪れていた。すっかり虜になってしまった。

シアターシエマで上映される映画は、テレビCMが流れ大々的に取り上げられるような作品ではない。私が見た『主戦場』のように、映画に関心がなければ目に触れることのない作品ばかりだ。しかし、マイナーだからこそ「こんな面白い映画があるんだよ」と誰かに教えたくなってしまう。大きな映画館では決して出会えない、未知なる作品との出会いを経験できるのだ。

今なら私にも言える。

「佐賀にいるのに、シアターシエマに行ったことがないんですか?」

シアターシエマで未知との出会いをぜひ楽しんでみてほしい。