私は、卵が食べられない。アレルギーではないが、食べると具合が悪くなる。そんな私にとって、幼い頃からお菓子といえば、卵を使っていない和菓子だった。卵でふんわり仕上げられたケーキや、佐賀の銘菓として有名な丸ぼうろなどのお菓子にはとんと縁がないのだ。
佐賀には多くの和菓子屋さんがあるが、私にとって一番馴染み深いのが、自宅のほど近くにある鶴屋だ。鶴屋は、佐賀の老舗お菓子屋の先駆け的な存在だ。佐賀藩初代藩主の御用菓子司とされたのをはじめ、佐賀の銘菓として広く親しまれている丸ぼうろの元祖としても知られる。古典的な和菓子にとどまらず、意欲的なお菓子も数多く作っている。
この鶴屋が販売しているお菓子のなかで、私が愛してやまないのが鶴もなかだ。
鶴もなかは1つ130円で、種類は2つある。茶色っぽい皮に粒あんがきっしり詰まったものと、白い皮に挽いたお茶のこしあんがたっぷり詰まったもの。どちらも抜群に美味しい。上品な甘さのあんが、サクサクの皮にこれでもかというほど詰め込まれている。幸せが詰まっているのだ。
和菓子と一緒にいただくものといえば、緑茶と相場が決まっているが、鶴もなかとブラックのコーヒーの相性も抜群だ。はじめに最中を一口食べ、次にコーヒーを飲む。すると口に残った甘みや最中の皮がすっかり洗い流され、二口目への準備を完了させる。幸福の永久機関である。特にコーヒーと合うと思うのは粒あんの鶴もなかの方だ。お茶のあんに比べて甘みが強いので、コーヒーがより引き立つ。あぁ、食べたくなってきたぞ。
記事を作成するために開けた最中がそろそろ湿気ってしまうので、このあたりで終わりにする。ぜひ、あなたも鶴もなかを味わってこの幸せを噛み締めてほしい。