県内外の作家の素敵な手仕事を扱う佐賀市白山のギャラリー遊で、「ハシヅメミツコ 高祖かず子展」が開催中です(2019年12月29日まで)。コンクリート打ち放しの壁を彩る高祖さんのニット作品と、静謐さをたたえるハシヅメミツコさんのガラス作品の競演です。
ここではギャラリー遊のオーナーでもある高祖さんのニット作品を中心に紹介します。
はっと目を引く鮮やかな色味は、高祖さんの手染めによるもの。意外性のある色合わせも目を楽しませてくれます。手染めならではの色ムラがありますが、色が均一でないからこそ、ニットが立体として美しく立ち上がってきます。
「ひと口で赤といってもいろんな赤がある」と高祖さん。色に名前をつけるのかお尋ねすると、色は幾通りにでも誕生するため、ひとつひとつ命名しないし、そのときによって出会える色は違う、とのこと。一期一会なんですね。手染めの発色は人間の計算を超えた領域にあり、もちろん機械では及びもつかない。偶然ならではの美しさというものがあるのだと気づかされます。
高祖さんがよく使うのはベビーアルパカの毛。かつては成長したアルパカの毛を用いていたけれど、使いたい毛糸が見つからなくなってきたところ、細く軽く柔らかいベビーアルパカに出会ったそうです。
細いベビーアルパカの毛は、2本合わせることで太い毛糸にすることも可能です。あえて違う2色を合わせることで意外性を楽しむことができると言います。例えば、ピンクにグレーを合わせたり、ベージュを合わせたり、はたまた補色のグリーンを合わせたり。ピンクを着ることに抵抗がある人でも身に着けやすい色味になるそうです。
この日、高祖さんは自身の作品を身に着けておられましたが、10年以上着用しているものだとのこと。とてもそうは見えない状態の良さで、発色の鮮やかさも展示品からまったく見劣りしないほどでした。華やかな見た目からは想像できないほど丈夫で長持ちするのですね。
手仕事がお求めやすい価格になるはずがない。美しい手仕事に出会うと、いつもそう思います。でも、買う・買わないにかかわらず、まずは訪れて手仕事を実際に目にしてほしいと高祖さんは言います。
展示会情報はHP上に掲載するし、常連のお客様にはDMを送っているから、写真は目にしていただける。でも、写真はすべてを伝えてくれない。実物を目にすることで初めて気づくことがたくさんある。そう語る高祖さん。
ニット作品の色ムラあってこその美しさも、ハシヅメミツコさんの作品が決してガラスに絵を描いたものではないことも、自分の目で見ないとわかりません。
手仕事を見て、触れて、作品の生まれる過程を知ろうとすること。日用品のほとんどを安価に手に入れることができるようになった現代社会だからこそ、手仕事と触れる心豊かな時間が実は必要なのではないでしょうか。