アートとどう関わり、何を学んだか?これからどうするか?3年間を総括する!SMAART大発表会

  • report
  • アバター   BY  伊藤恵子 主婦ライター・旅に出たい在宅ワーカー

2020126日、2019年度SMAART受講生による1年間の活動報告「SMAART大発表会」が佐賀大学で開催され、アートマネジメントセミナーとアート情報サイトpotari編集部の2つのプログラムの受講生が発表を行いました。

講師にはアーツカウンシル東京事業推進室事業調整課長の森司氏、プロジェクト・コーディネーターで立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任准教授の若林朋子氏、株式会社電通の電通Bチーム倉成英俊氏、美術ユニット・オレクトロニカの加藤亮氏と児玉順平氏。potariのスキルアップ演習で指導いただいた江副哲哉氏、忠聡太氏も出席されました。

2017年度からスタートしたSMAARTのまとめムービーを視聴した後、potari編集部員の前田さんと赤土さんが1番手で発表。

 

佐賀大学芸術地域デザイン学部の学生である2人は広報紙「ぽたりニュース」の制作にかかわった中心的メンバー。アートマップを紹介した夏号、有田取材を記事にした冬号の制作過程や工夫した点・苦労した点を述べました。アートを仕事としている人に関わった経験やどんな紙面にするか試行錯誤したことが大きな糧になったことがわかります。講師からは広報紙の完成度の高さを評価する声が上がる一方、目的や編集方針を絞るべき・個人的な視点を入れたりニッチなところを突くなどしてはどうかといった助言がありました。

次は大元さん・中田さん・伊藤によるグループ発表。当日参加できなかったメンバーの意見や気づきも盛り込んで、potariで学んだことやそれを活かした経験、potariの課題を述べました。個人的な反省はできているがpotariそのものへの反省という視点が欠けているとの指摘や、potariのために自ら行動を起こさなければという気持ちを継続するためにはなにが必要か、お金かやる気か、それらはどうやったら生み出せるのか追求した方がよいとの助言を受けました。学んだことを活かしたことに関して、一国民の立場から税金の使い道として評価できるとの嬉しいコメントもいただきました。

休憩を挟んで、アートマネジメントの発表に移ります。最初に登壇した古賀さんは写真と詩にダクソフォンによる即興演奏を組み合わせ、会場を独自の世界観で飲み込みます。講師からはぶれない独自のスタイルが評価され、予定調和でないものを見せられたことの面白さについての言及もありました。

 

次は学生によるグループ発表。井上さん・安原さん・穴瀬さん・小野さんによってアートカフェやモバイルアートクリニック、オレクトロニカアートセンター、「発生の場」の運営に携わった経験が発表されました。

会場係としての気づきや工夫が、アートの現場に携わった感動と共に伝わってきます。講師からはアートの現場で当事者の側に回った経験が成長につながったことがうかがえるとの評価があった一方、どのようなマネジメントをするのかを明確にすべきといった助言や、より文化的で積極的な発表を目指すべきというプレゼンそのものに関する注文もありました。

続く徳永さんは年間の活動を豊富な写真に瑞々しい感想を添えて時系列で発表。

アートの面白さを知りたいとの思いを出発点に、経験が語られていきます。学生との交流でハッとさせられることが多かったという徳永さんに、大学という場に学外の人間が入ることの意義を示したと評価する講師も。プレゼンスタイルは個性を評価する声が出る一方で、10分の制約を意識して伝えたいことを絞る工夫を促す声もありました。

学生の別府さんはアーティストやキュレーターの仕事を間近で見ることで制作活動や展示にかける思いに触れることができたとプレゼン。

 

コミュニケーションを積極的にとるべきだったとの反省の弁も出ました。肝が据わったプレゼンを評価し、別府さんのマネジメントへの適性が現れているとのコメントが講師から出ました。報告としてはよくできているが行動を示すべきとの指摘も。アートマネジメントに関わる人間とアーティストがどのように関わっていくのが見えてきたことがうかがえるので、それを言語化して後輩たちに伝えるよう奮起を促すコメントも寄せられました。

中学の美術教師・末次さんは「アートと学校をつなぐ」というテーマで、「見て描く」ことを偏重する中学美術の教育の問題点を指摘すると共に、鑑賞の授業を行った体験を発表。

子どもとアートをつなぐ接点を作るために、美術館やギャラリー、大学・短大、アーティストやNPO、美術団体などが手をつなぎ、子どもにとってはアート学習の場、佐賀にとっては人材育成の場が形成されることを望むとメッセージを送りました。説得力のある熱いプレゼン。講師の森氏が鑑賞教育をとおして思考力を鍛える社会的実験は既に一部で行われていることを紹介し、倉成氏が自ら行っている教育事業「アクティブラーニングこんなのどうだろう研究所」で世の中に教育プログラムを投げかけていることを説明。子どもにとってのアート学習の場が形成されることを「望む」のではなくて、場を「立ち上げる」方法を考え、末次さんがファシリテーターとなって共鳴する人を集めるよう助言がありました。美術教育の在り方を模索する末次さんの姿勢に賛同する声も。

最後は江口さん・森さん・中田さん・井手さんによるグループ発表です。会場に着いたときから、部屋の壁になにやら貼ってあるなと思っていたのですが……、目隠しの新聞紙を4人が、ばっ、と剥がすと、巨大なコラージュ作品が登場!SMAART3年間の活動における写真がひとつの大きな作品となっていました。

SMAARTでの学びをこれからどう活かしていくのかというテーマで1人ずつ発表。自分にとってのアーカイブは感動を文章に残すことだと述べ、今後も成長しながらアートに関わっていきたいという中田さん。パティシエの井手さんは自分自身が表現者だと気づいた経験から、今後は表現者としていかにアートと関わっていくか考えていきたいと発表。江口さんはアートをとおして得た心の変化を出発点に、自ら絵を描いて出品したり、発達障害のある子どもと共にアートの場を形成した経験を説明しました。人が何に心を動かされるのか観察し続けたという森さんは、自由意思による心の奥底の共感を発見したことがSMAARTでの学びだったと締めくくりました。これからもアートに関わっていくという、4人による高らかな宣言でフィニッシュ。この発表は見る者の心にダイレクトに響き、講師からも高評価が。アートをとおした4人の旅路が見えるという声、今後の活動への期待の声が寄せられました。コラージュ作品中の「楽日初日」の前向きなことばも印象的でした。

発表が終了したところで小坂学部長が挨拶。SMAART開始前年、花田准教授と学外との結びつきやアートに収れんしすぎない企画を検討したところ、アートマネジメントがテーマとして浮上したことが紹介されました。反省点もあるものの、3年間の積み重ねによる成果と今後への期待にも言及がありました。

 

経済が専門でマーケティング分野から助言を行った西島教授は、社会の問題を解決する手助けを行う社会科学の分野に属する点で経済と芸術は共通していると述べ、芸術の重要性に触れました。

異動のため10月に佐賀から離れてからもpotariの世話人を続けている杉本准教授からはSMAART3年間の事業は終了するが、ここで生まれた出会いやつながりは継続していくとのメッセージが。

SMAARTで写真撮影に携わったカメラマン・長野さんが制作に関わる田川市のフリーペーパー「ネゴトヤの部屋」を紹介、アーツカウンシル東京の森氏が東京アートポイント計画を紹介するなどした後、花田准教授が事務局の緒方さんと吉村さんをねぎらい、今後の展開に期待する前向きな言葉で締めくくりました。

発表者がそれぞれの言葉や手法で経験や思いを伝えた大発表会。「楽日初日」の言葉どおり、この日が新たなスタートとなることでしょう。