旧枝梅酒造はアートと歴史の発信基地だ

旧枝梅酒造について紹介するこの記事は「3person Exhibition soil」展記事の続きです。

東の蔵で開催されたsoil展は5月24日をもって終了し、現在イベントは行われていませんが、旧枝梅酒造という場所そのものが魅力にあふれていることを説明していきます。

旧枝梅酒造を訪れるときに感じる、この場所は面白い!という感覚。そして、これから先ますます熱い場所になるという予感。

それらを少しでも共有していただければ幸いです。

枝梅酒造の歴史

枝梅酒造の歴史は1864(嘉永7)年、この地で創業された造り酒屋に始まります。

1907(明治40)年、「窓乃梅酒造」の分家として「枝梅酒造」となり事業を展開してきました。

2009(平成21)年、四代目の急逝により事業を停止。佐賀城下に残る唯一の醸造所跡をどうするかが問題となり、試行錯誤が始まりました。

2015(平成27)年に旧母屋部分など長崎街道に面した一部を佐賀市が買収。2017(平成29)年、NPO法人まちの根太が枝梅酒造株式会社から酒蔵部分の管理を委託されました。

建物はいずれも老朽化が進み、補修が必要な状態でした。

2018(平成30)年に佐賀市のリニューアル工事が終了しました。

一方のNPOも2019(平成31)年1月、佐賀市の助成金や西の蔵の賃貸収入、寄付金などを財源に東の蔵の修理に着手します。同年3月に屋根と壁修理工事が終了しました。

枝梅の現在とこれから

NPO管理部分の一部で、枝梅酒造で最も大きな建物だった北の蔵は補修が必要です。資金が調達でき次第補修を行い、1階をオフィスやアトリエに、2階をゲストハウスにすることを計画しています。ここにアーティストが滞在して制作を行い、アートを求める人々がここに集う。そんなことが実現したら素敵ですね。

屋根と壁の補修が終了している東の蔵もリニューアルし、コンサートホールにすることを目指しています。旧枝梅酒造が将来、佐賀市内のアートや音楽の一大拠点になることを想像するとワクワクしませんか?

でも実は既に枝梅はアートの拠点として始動しているんです。

西の蔵の内部にある事務室は、現在、5人の作家さんのシェアアトリエになっています。前回記事では説明不足でしたが、soil展を開催した日本画家の大串亮平さんもここで制作活動を行っています。

シェアアトリエなるものが佐賀市内に存在すること自体に新鮮な驚きを感じます。作家さんが集まる空間は、さぞかしアーティスティックなのでは?と思ってしまいますよね。実際、ここは古道具が豊富にあるロケーションが作家さんの感性と共鳴する、なんとも楽しい場所です。

制作の傍ら、枝梅に残る古道具や木材を引っ張り出しては、リメイクして実用品にしてしまうなど、センスとアイデアが随所に光っています。枝梅酒造の母屋などで使われていた、高級感ある古い家具もさりげなく活用されていて、アンティーク好きにとってもたまらない空間です。

事務室ではオリジナル商品も販売中です。佐賀発のグッズでアートを日常にとり入れてみませんか?

アイデアを気軽に持ち込んで

東の蔵は実は秋までイベントの予定がありません。佐賀市内では他に見られないような特異な空間が活用されないのはもったいないですね。

展覧会の開催を検討されている作家さんはもちろん、「イベントを開きたい」「ワークショップを行いたい」「とにかくなにかやってみたい」そんな人は一度相談してみませんか?

イベント等を開催する計画のない人でも、「枝梅をこんな風に活用すればいいのでは?」というアイデアをお持ちの方、ぜひそれを枝梅に持ち寄ってください。(実はぽたり編集部でも、枝梅とのコラボアイデアをどうにかひねり出そうとしているところです…!)

また、NPO法人まちの根太では、北の蔵の補修費用を調達するため、寄付金を募集しています。北の蔵の補修は、歴史ある建物を保存し、枝梅をアートの拠点としてもう一段階押し上げるために必要な資金です。新たな価値・新たな人の流れを創造する取り組みを資金面から応援してみませんか?詳しくは下記URLでご確認ください。

https://machinoneda.wixsite.com/machinoneda/donation

佐賀市管理地や周辺地区も魅力的

最後に、旧枝梅酒造の佐賀市管理地や周辺地区について。株式会社とっぺんが佐賀市管理地の施設管理を委託されています。

かつて母屋と店舗だった建物は料理店”酒の蔵えん”に生まれ変わり、他ではなかなか味わえない珍しいお酒と新鮮な食材を使ったおいしい食事が楽しめます。”えん”の隣の建物は誰でも利用できるトイレと休憩所になっており、ほっとひと息つけるスペースです。

“酒の蔵えん”や休憩所の前を東西に長崎街道が通り、ノコギリ型家並みと呼ばれる独特の景観を目にできます。まっすぐな道にすることをあえてせず、ノコギリの刃のようにギザギザさせたのは、城下の防衛が目的です。侵入した敵が一直線に攻め込めないようにするための配慮なんですね。

旧枝梅酒造の建物だけでなく、周辺地区も歴史的に見どころが多いことがおわかりいただけたと思います。まずはこの一帯をそぞろ歩くことから始めてもいいかもしれません。ただし、住宅街なのでマナーを守って楽しみましょう!