泥縄窯~第22回黒髪山陶芸作家村 秋の窯開きに向けて・2

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  • アバター   BY  伊藤恵子 主婦ライター・旅に出たい在宅ワーカー

毎年恒例、「黒髪山陶芸作家村 秋の窯開き」が今年も開催されます。今回はWEBで同時開催されることが特徴。11月20日(金)からの開催に向けて、ぽたり編集部では参加される窯元さんへの取材を行いました。6回連載の第2回は泥縄窯の中島 浩文さんと美奈子さんにご登場いただきます。

土をこね、窯で焼く。焼締に焼き物の原点を見る

釉薬を一切使わない、「焼締(やきしめ)」という技法を追求する泥縄窯。「黒髪山いこいの広場」近く、木々の緑にすっぽりくるまれるような環境で、生き物の気配を身近に感じながら、ご夫婦で作陶を続けています。お二人がこの道に入ったきっかけを伺いました。

「焼締をやっている窯元に兄が弟子入りしていたんです。妙なことに兄が辞め、私がこの道に入ってしまって。もともと私は美術関係が駄目で。絵も書も苦手なので、まさか焼き物をするとは思っていませんでした」(浩文さん)

「前は別の仕事をしていたんですが、『これじゃない』という思いがあって、窯元に弟子入りしました。そこにこの人(浩文さん)が来て。作業のひとつひとつの面白さを修業時代に知りました」(美奈子さん)

「焼締を選択したことはたまたまです」と笑いながらも、浩文さんは焼締の魅力を語ります。「焼締という技法に焼き物の原点を感じたことは確かです。土をこねて、それをただ窯で焼く。シンプルでしょう」シンプルで欲がなく、それでいて力強い。焼締の器を見るとそんな印象を受けます。

作業場では分業しているわけではなく、お互いが好きなものを作っているそうです。

「同じ部屋で作業していても、相手が何を作っているかなんて全然気にしていませんよ」と言う浩文さんに対し、「私は気にしてる」と笑う美奈子さん。

浩文さんは食器を中心に花器などを作る一方、美奈子さんは器の他に置物なども作ります。

「作陶の作業は実は全体の3分の1くらい。薪割りと土づくりが大変なんです。干してつぶし、水に溶かして濾すことで、土をいい状態にする。肉体労働です。私は地元・黒髪山の土を使うことにこだわっています。熱に弱いから他の土とブレンドしますが、やっぱり地元の土には思い入れがある」と美奈子さん。

窯で焼く作業もまたハードワークです。

「焼きあがるまで大きい方の窯では10日、小さい方の窯では7日かかります。最初の2日ほどは焚火みたいな火力で、それから徐々に火を強くしていきます。一日中見ていなければならないから交替で見ていますよ。私は夜型なので夜の当番です」と浩文さん。

窯詰めの作業を見学。炎の効果を計算しながら配置する

10月下旬、ぽたり編集部は窯詰めの作業を見学させていただきました。4日もかかるというこの作業では、窯の後方から作品を置いていきます。棚板を組んで、窯の天井までびっしり並べます。隙間が大きいと、そこから炎が抜けてしまうのです。密に詰めた作品の間を炎が複雑に動くからこそ、面白い焼きができるといいます。

窯焚きでは正面からの前くべに続いて横穴からも薪をくべます。窯内の激しい炎があたる場所には気に入ったものを置きます。そういう場所では当然傷が出やすいのでめったに現れないものがちゃんとした姿で窯から出てくることは珍しいです。

藁を使うのも、炎の効果を狙ってのもの。藁の成分と土が反応をしてその時々の雰囲気によって様々な色が出ます。また、藁の灰は急須の蓋に塗ることで急須の本体と蓋がくっつかないようにするなどの効果が。

青く色が出るのは、酸素が少ない状態で大量の灰を一気にかぶった結果。鉄が還元したら青く発色するのですが、鉄やその他の金属元素は土によって含有量が異なり、しかも窯のどこに置くかによって炎や灰のあたり方が違うので、焼き上がりには予測できない部分が大きいのです。さらには焼くときの気候や天候も影響します。

浩文さんは言います。「ずっと焼き物をやっていても、同じものが焼けることは二度とないんです。温度が上がらなかったり、逆に燃えすぎたり。その原因がわからないということも多いです。そこが焼き物の面白いところ」

これからやってみたいことを尋ねると、こんな言葉が返ってきました。

「夏や梅雨時の温度・湿度が高い時期にまたやってみたいですね。汗だらだらで窯のそばにいることになりますけど」

朗らかに笑う姿に、焼締に対する際限ない情熱が感じられました。

※「第22回 黒髪山陶芸作家村 秋の窯開き」(11月20日~23日)は、新型コロナウィルス感染の拡大状況によって、WEB会場のみの開催になる場合があります。開催状況については、各参加窯元へお問い合わせください。

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