宝寿窯~第22回黒髪山陶芸作家村 秋の窯開きに向けて・5

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  • アバター   BY  伊藤恵子 主婦ライター・旅に出たい在宅ワーカー

毎年恒例、「黒髪山陶芸作家村 秋の窯開き」が今年も開催されます。今回はWEBで同時開催されることが特徴。11月20日(金)からの開催に向けて、ぽたり編集部では参加される窯元さんへの取材を行いました。6回連載の第5回は宝寿窯の山本 文雅さんにご登場いただきます。

土と釉薬へのこだわり、自然界にインスパイアされたフォルム

オリジナリティあふれるフォルムで知られる宝寿窯は、陶芸作家村の中の小高い丘の上にあります。実家が窯元だったものの、焼き物の道に入るつもりはなかったという山本さん。

「有田工業高校でグラフィックデザインを学び、芸大に進んでデザイン事務所で働くことを目指していました。高校3年生のときに自宅が火災にあい、長男だし実家を手伝うことになって。それ以来40年焼き物を続けています。父が作っていたのは飾り壺や陶板などの有田焼で、器は作っていなかったんですが、自分は24歳から器をやり始めました。美術品とか大きいものが売れる時代ではなくなっていたから」

器の世界では後発だったので、古典的な有田の柄ではない、まったく違う柄を模索する中、独自の素材・独自のフォルムへのこだわりが育っていったといいます。

「素材に関してこだわっているのは、ベースの土の配合です。混ぜてブレンドして自分なりの土を作る。フォルムに関しては、有田焼をずっと見てきたこと・高校時代にデザインを学んだことから、それらとまったく違うものを生みだそうというところからスタートしています」

冒頭の写真の作品では、氷が溶けだした様を表現。また、下の写真は溶けだしたマグマが冷え固まった瞬間を表現した作品(左)と、焼き杉の板で粘土をかたどった作品や、流木に粘土を載せて風化した木の表面を写しとった作品(右)です。氷やマグマ、木の質感を出すために釉薬に工夫を重ねたといいます。

「木目とか石とか、人間が作為的にデザインしたものでなく、自然界に転がっているデザインにインスパイアされます。それをいかに器に表現できるか。ここ4、5年ほどはその点に凝っています」

ライブだからこそ伝えられることがある

小説を読むのが大好きで年間80冊は読むという読書家。家で過ごすこと自体は苦にならないとはいえ、心理面でコロナ禍の影響は大きかったといいます。

「自宅にいて、時間だけはたっぷりあるのに動けないという状況でした。締め切りというゴールがなくて、道が見えない。同じところをぐるぐる回っている感覚だった。そんな中、9月に小倉で展示して、たくさんの方にご来場いただきました。自分の作品が求められていたという実感がありましたね」

現在は、秋の窯開きや百貨店での展示などの準備で忙しく過ごしています。

「いくつものゴールがあるから、忙しいけれど充実していますね。自分は展示会場ごとのライブ感を大切にしています。読書の他に音楽が好きでサザンオールスターズのライブとかに行くけど、生で見るのとネットで見るのとでは違う。作品の販売に関しては、もちろんWEBも充実させていきます。でも、生のコミュニケーションで思いを伝えながら販売するのは、やっぱりWEBだけではできない。お客さんと対面で話していると、『作ろう!』て気になるんだよね」

その気概からどんなものが生みだされていくのか楽しみです。

※「第22回 黒髪山陶芸作家村 秋の窯開き」(11月20日~23日)は、新型コロナウィルス感染の拡大状況によって、WEB会場のみの開催になる場合があります。開催状況については、各参加窯元へお問い合わせください。

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