「表現の不自由展」に行ってきました

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  •   BY  杉本 達應 プログラムが生みだすビジュアルをこよなく愛する、potariの旗振り人。

こんにちは、ぽたり東京特派員の杉本です。

2022年4月、東京都国立市の「くにたち市民芸術小ホール ギャラリー」で開催された「表現の不自由展 東京 2022」に行ってきましたので、現地の模様をレポートします。

「表現の不自由展」は、検閲や自粛によって「消された」作品を展示する展覧会です。「あいちトリエンナーレ2019」で開催された「表現の不自由展・その後」が展示中止になり、その後再開したニュースを覚えていらっしゃる方は多いとおもいます。

その「表現の不自由展」は、いまも各地で開催がつづいています。2021年は、名古屋展が会期途中で中止となりました。一方、大阪展は会場から利用の取り消し処分を受けましたが、裁判を経て、無事開催されています。

東京展は、2021年に新宿区の会場で開催予定でしたが、会場から使用を拒否され延期していました。今回、国立市の会場での開催が予告されると、多くの抗議が殺到したようです。これに対し、国立市は、「公の施設の利用は原則として保障されるべき」と発表しています。

チケットは、50分間の時間枠に区切られた事前予約制でした。およそ1600名分が完売したそうです。

会場周辺につくと、見渡すかぎり警察官だらけです。私服警官も含め、会場周辺には100人以上の警察官が立っていました。

右派団体の街宣車が、会場のブロックの周りをぐるぐると低速で走っていました。会場のとなりには国立市役所があります。市役所前では、会場使用を許可した国立市長を非難し、会場の近くでは不自由展の開催に抗議します。車上のスピーカーから響くのは、「ばかやろー」、「そうだ、そうだ」という怒鳴り声。警察官は、車内の男女がマイクでがなりたてる様子を、撮影したりしずかに見守っているだけです。街宣活動も「表現の自由」なのでしょうか。警察は何もしないんですね。

抗議活動に妨害されないように、会場は物々しい警戒態勢がとられていました。会場敷地周辺はゲートで仕切られ、予約者のみが入れるようにチケットの検問が設けられています。つぎに、施設の入口手前では、手荷物チェックを受けます。わたしのリュックに入っていた折り畳み傘は持ち込みできないとのことで、入口に預けました。そして、なんと空港にあるような金属探知のゲートをくぐります。

おなじみの検温を受け、手指の消毒をし、禁止事項の紙を受け取り、ようやく展示室に入れます。それほど広くない展示室内の壁ぎわに、展覧会関係者が数メートル間隔で座っています。カメラも設置されていて、完全な監視状態です。残念ながら落ち着いて観賞できる雰囲気ではありません。

今回の展示では、16組の作家の作品が並んでいます。展示作品に過激さはまるでありません。この小規模な展示に、街宣車による抗議活動がなされるとはなんともアンバランスです。

作品をひとつ紹介します。大橋藍《アルバイト先の香港式中華料理屋の社長から「オレ、中国のもの食わないから。」と言われて頂いた、厨房で働く香港出身のKさんからのお土産のお菓子》(2018)は、タイトル通りのお菓子とその袋を展示する作品です。この作品は、「五美大展」(「東京五美術大学連合卒業・修了制作展」)会場の国立新美術館から展示を拒否されました。直接の理由は「腐敗する食品だから」でしょうが、その経緯を説明するテキストの展示も断られたそうです。つまり差別問題を避けたかったのでしょう。美大生の卒業制作が美術館で展示拒否される事案は、表沙汰になっていないだけで、じつはかなりあるのではないでしょうか。

ところで、会場前の公園は日当たりのよい心地よい場所です。わたしはこの公園のふだんの様子を知っているので、桜咲く春の公園が怒号まみれになってしまったことが、なにより悲しかったです。公園であそんでいた子どもに、大人はこの事態をどう説明すればよいのでしょうか。子どもたちが、何を感じていたのか気になりました。