春の訪れとともにOperation Tableの甕覗色=みずいろの空間がピンクの花びらでおおわれます。澤登恭子の展覧会「春の嵐」です。手術台や薬品棚や床に散らばる桜の花びらは、さくら色に染められたワックスでできたもの、すべて澤登の手になるものです。
澤登は東京藝術大学大学院を修了した2000年以後、CAS大阪(Contemporary Art and Spirit)や水戸芸術館現代美術センター・クリテリオムの個展ほか、アサヒビール大山崎山荘美術館、広島市現代美術館でのグループ展などに参加してきました。自身の身体を媒介として、社会や宗教の歴史が強要する女性像に抗う意図を示す挑発的な、ときに過激な作品で知られています。
山口に居住地を移して以降は、山口や北九州を拠点に活動していますが、昨年11月に山口市の山口県旧県会議事堂を舞台に2日間だけ開かれた個展「ロンド~繰り返し見る夢の続き」は、これまでの作品を集大成した「夢のように現うつつのように 繰り返しては何度も現れる幻影 まぼろし夢の断片を繋ぎ合せて紡いだ作品集」となりました。重厚な議員会議室の広い一室が夜の遊園地の映像によって光と幻影に乗っ取られ、権力の象徴が夢のように軽やかに回転していく光景は、観る者をうっとりさせながら、場所の意味を連想し冷笑も誘ったものでした。
澤登のOperation Table登場は、パートナーの中野良寿と組んだ展覧会「甕覗の鏡」以来です。
今回の「春の嵐」では平成から新しい元号へと変わる5月を前に、「女性のチカラで嵐を起こしてゆく時代を押し出す(澤登)」桜吹雪がOperation Tableの空間を吹き荒らすことでしょう。