「日本のゴッホ」長谷川利行の生きざまと作品のエネルギーに圧倒 久留米市美術館

戦前の日本を生き抜き、怒濤のように描きまくった画家・長谷川利行。新発見の大作《白い背景の人物》を含む約140点の作品で、その画業と足跡を、あらためて楽しめる展覧会が全国を巡回しています。久留米市美術館でも2018年9月22日から11月4日まで開催されました。

「リコウ」の愛称でも親しまれている長谷川利行(1891-1940、はせかわ としゆき)は、京都・山科生まれの画家。30歳頃に上京し、画家を志して創作に没頭します。36歳で第14回二科展・樗牛賞(ちょぎゅうしょう)、翌年には1930年協会展で奨励賞を受賞するなど、画家としての天賦の才能を一挙に開花させました。しかし生来の放浪癖からか、浅草や山谷、新宿の簡易宿泊所を転々とするようになり、最後は三河島の路上で倒れ、板橋の養育院に収容。誰にも看取られず、49年の生涯を閉じます。

利行の絵には、その壮絶な生き様を想像させないほど、明るく強い色彩とうねるような筆触があります。街角では建物を描き、カフェでは働く女性を描くなど、昭和初期の東京の行く先々がアトリエでした。二科展などでの入選歴はあるものの、亡くなってから、その技法があらためて注目されました。画風や波乱に満ちた生涯が似ていることから、「日本のゴッホ」とも称されました。しかし生前の評価は低く、戦禍で作品も消失したため、世に出ている作品はわずかでした。今回の展示では、新たに発見された大作《白い背景の人物》や、隅田川公園に建設されたプールを題材とした《水泳場》といった油彩画のほか、水彩画やガラス絵などの作品が並びます。

利行の描く風景画や静物画、人物画にはどれも、今から80年から90年前に描かれたとは思えないほどの鮮やかな色彩にあふれ、風情、情感、時代の雰囲気が画面全体に漂っています。作品を通して、彼の生きざまと作品のエネルギーに圧倒され、胸を打たれます。利行は「絵を描くことは生きることに値するという人は多いが、生きることは絵を描くことに価するか」という言葉を残しており、会場には絵に生きた15年を感じられる空間が広がっていました。

新発見の大作とともに、画業をたどり、「生きること」「描くこと」についても考えさせられる展覧会です。久留米市美術館での開催後は、全国巡回展の最終地となる栃木県の足利市立美術館で2018年11月13日から12月24日まで開催されます。近年、《カフェ・パウリスタ》や《水泳場》といった作品が相次いで再発見され、昨年には《白い背景の人物》などの大作も新たに見つかるなど、再び注目を集めている画家・長谷川利行の世界をお楽しみください。