静謐な空間に展示されたアート作品。心ゆくまで堪能したら、次の作品へ。これも素敵。……美術館やギャラリーでこういう風に過ごすのは至福の時間ですよね。でも、あえて別の過ごし方を探すのもおもしろいと思いませんか?アートのために設けられたあの広い空間が、例えばファミリー向けツアーの会場となったら、どうでしょう?親子で一緒に楽しめるワークショップの開催でもいいし、親と子が別の場所でそれぞれの時間を楽しめる企画でもいい。子どもがワークショップに参加している間、親は展示室を回ったり、美術館(ギャラリー)と提携しているカフェでくつろいだり、プチ観光を楽しんだり。
子どもまたは親子をターゲットにした展示会はあるけれど、ファミリーと美術館(ギャラリー)の付き合い方は、「親が教育目的で子どもを連れて来てアートを鑑賞させる」というスタイルになりがち。もっと違った、美術館(ギャラリー)とファミリーの付き合い方があっていいのではないかと思います。
きっかけは子育て真っただ中の私の、個人的な願望でした。
ああ、自分の時間がほしい。カフェでのんびり過ごしたい。ひとりで出かけたい。でも、目の前に子どもがいるという現実。いくら子どもが可愛くても、ときにはしんどくなる。誰か託児を引き受けてくれないかな。
そんなことを思う私の頭に閃いた「美術館×託児」のキーワード。
美術館ってあれだけ広くて立派な施設だし、あのスペースで託児してもらえないかな?名付けて「アート作品に子守りをお任せ!美術館対抗・企画合戦」。美術館またはギャラリーごとに託児企画を発表して実行し、来場者数×入場料が一番多かった館(またはギャラリー)が勝者。こんなの実現すれば素敵じゃない?親としても助かるし、美術館やギャラリーにとっても施設の宣伝になって旨味があるんじゃないだろうか。
でも、実は既にあるんですね、「美術館×託児」。夏休みなんかは子ども向けワークショップが全国各地で開かれていて、保護者同伴が条件じゃない、つまり子どもだけで参加できるものもけっこうあるみたいです。もちろん「託児」だなんて表現はしてないけど。県内でもギャラリー開催の単発の子ども向けアート教室、というのは存在します。じゃあこの「美術館×託児」の企画って必要なくない?いや、美術館またはギャラリー発案のファミリー向けツアーをやるというのなら、企画としてたぶん新しいですよ。と思い至ったところで、はたと気づきました。実は大人がどう過ごすか、の方が問題である、と。美術館またはギャラリーがファミリー向けでパッケージを作るのであれば、子どもがワークショップに参加している間、大人がいかに過ごすかについても提案せねばならない。
佐賀市内でいえば、佐賀県立美術館ぐらいの規模があれば、子どもと大人の両方を受け入れるキャパがあります。子どもがワークショップに参加している間、大人は展示室を回ればよいし、もしアートにまったく興味のない人なら、カフェでゆったり過ごせばいい。でも、小規模なギャラリーの場合は?子ども向けワークショップを開くだけでキャパは満杯なわけです。となると、近隣施設との連携が必要になる。子どもがギャラリーにいる間、大人は近くのカフェで過ごす、とか。ギャラリーとカフェのセットで〇〇円です、みたいなパッケージで。観光と連携してみたりしてね。城下町散策でもグルメスポット巡りでもいい。もちろんギャラリーをハシゴするのでもいい。
少しでも共感してくれる人、美術館・ギャラリーの関係者もそうでない人も、アートに興味がある人もない人も、まずは妄想を語り合うことから始めませんか?ファミリーと美術館(ギャラリー)、ファミリーとアート、ファミリーと街の新しい形を描ける、かも。