日本画家・大串亮平さん、彫刻家・諸井謙司さん、陶芸家・興梠宜伸さんの3人展「3person Exhibition soil」展が旧枝梅酒造で開催中です。
長崎街道のノコギリ型家並みと呼ばれる、城下の防衛のためあえて少しギザギザに作られた通りを辿れば現れる、まちの休憩所や酒の蔵えん。その奥に、かつての酒造そのままの空気を残した建物群があります。その中のひとつ、東の蔵がsoil展の会場です。
展覧会の開催を検討していた大串亮平さん・諸井謙司さんに興梠宜伸さんが加わって、土(soil)をテーマにした展覧会が実現しました。
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作家3人の魅力
大串亮平さんの日本画は自然への温かい眼差しが感じられます。特に動物を描いた作品ではストーリー性がある点も魅力。西洋画で使われる技法をあえてとり入れるなど柔軟さも持ち味のひとつです。
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花を淡く描くことで鳥の存在感が増す。 蔵に眠っていた板に描かれた梅。 これも板に描かれた作品。翡翠が鮮やか。 燕子花の葉に幾何学模様を使う遊び心。 一重咲きの牡丹の神秘的な感じを表現。
諸井謙司さんは自然物や人物の彫刻作品を展示。人物像に流水紋をとり入れるなど、人と自然の融和を感じさせるような作品が印象的です。形や色味へのこだわりが随所に感じられます。
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“風の人”は人物と風が溶け合う不思議な作品。 種の持つ力強い生命力を表現した。 観客を会場内に誘っているかのよう。 ブロンズを磨くと金色に光る。表面を叩いて凹凸を付けたことで味わい深い輝き方に。
興梠宜伸さんは「地の章」シリーズを中心に展示しました。大地のエネルギーを表現した作品群ですが、貝殻や流木のイメージが融合された作品もあります。表現方法としての陶芸の可能性を感じさせます。
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流木のような肌合いが印象的。 貝殻のイメージであえてアンバランスに制作。 雨風で刻々と姿を変える大地の姿を表現。 地元・宮崎県の高千穂峡の岩壁をイメージして制作。上部には口が備わっている。
旧枝梅酒造という場所そのものの面白さ
作品に注目していただきたいのはもちろんですが、もうひとつ注目すべきは、旧枝梅酒造というロケーションを活かした展示方法。
作品のほとんどは蔵に残っていた木材等を展示台に使用しています。“半円で平べったいこの木材は大きな瓶の蓋かな?”などと想像しながら鑑賞するのも楽しいものです。
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木箱の上に展示。 板を積み重ねた上に展示。 このまま部屋のインテリアにしたい。
高い天井、むき出しの太い梁と柱。壁は木材で補強されていますが、部分的に土壁が顔を出しています(大串亮平さんの作品“翡翠”の写真参照)。
作品そのものの持つ力に、この場所ならではの面白さが合わさって、心地よい刺激を得られる空間が完成しています。
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補修が完了している東の蔵。広い建物は解放感があり、ついつい長居してしまう。
soil展は5月24日で終了しますが、旧枝梅酒造は足を踏み入れるだけで楽しい不思議空間です。建物自体に歴史的な価値がある上にたいへん広く、往時の酒造で使われていたものが豊富に残っていることもあって、訪れる者に“何が起こるかわからない”、“どんな出会いがあるのだろう”というちょっとした緊張感とワクワク感を与えてくれます。
次のレポートでは、旧枝梅酒造の歴史や現在、今後の展開について紹介します。
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未知のものが眠っている。 日本画家の大串さん。気さくな方です。