房 空路~第22回黒髪山陶芸作家村 秋の窯開きに向けて・6

毎年恒例、「黒髪山陶芸作家村 秋の窯開き」が今年も開催されます。今回はWEBで同時開催されることが特徴。11月20日(金)からの開催に向けて、ぽたり編集部では参加される窯元さんへの取材を行いました。6回連載の最終回は房 空路の鯉 のぼり子さんにご登場いただきます。

独自の作風を模索する中で出会った絵の具

清流のほとりにたたずむ風情ある古民家は、ギャラリーであり、また、そばやオードブル、スイーツを楽しむお食事処でもあります。華麗な絵付けで知られる房 空路の器はここで購入できます。

鯉さんに焼き物の道に入ったきっかけを伺いました。

「大学卒業後は企業で働いていたのですが3年ほどで退職し、職業訓練校で1年間、窯業を学んでのめり込みました。さらに窯業大学校で1年学んで、いつか独立したいという思いを固めました」

辻󠄀修さんのもとで15年ほど働いていたこともあってか、かつての作品は「辻󠄀さんの作品に似ている」と言われることがあったといいます。

「自分のオリジナルを追求する中で出会ったのが、友人の絵の具屋さんから教えてもらった絵の具です。赤、黄、オレンジなど様々な色がありました。それまでは紺色しか知らず、焼き物といっても陶器しか知らなかったけれど、色がぱきっと映える磁器に転向しました」 ※下の写真は現在の作業場の様子。

さらに工夫を重ねる日々、新たな絵の具との出会いがあります。

「上絵の師匠から雲母系の絵の具を紹介されて。15年ほど前のことですが、当時は珍しかった金・銀・赤などのきらきらした絵の具に出会い、自分の作品と組み合わせられないかと思いました」

特徴を出すには絵付けしかないとの思いで制作を続けるうちに、現在の作風に到達します。

挑戦を重ねるうちに生みだされた新しい器。日常使いを楽しんで

代表的な作品は記事冒頭の写真、「百花繚乱」シリーズ。他にも「蓮とドット」や「ポンポン菊」などの人気シリーズがありますが、新たなシリーズが登場しています。

「まだ名前をつけていないのですが、あけびや山帰来(さんきらい)、山ぶどうなど周辺に見られる植物の背景に金・紫・グレー・赤・グリーンなどの雲母系の絵の具を塗った新シリーズもおすすめです」

「他の絵の具と違って雲母系の絵の具は塗るのがすごく難しいんです。でも予期せぬ模様が偶然のように出るのが魅力ですし、オンリーワンの作品に仕上がるのが特徴です」

華麗なデザインの器は、購入後に使うのをためらう人もいるそうですが、どんどん使ってほしいと鯉さんはいいます。

「どんなシーンで器を使えばいいのか尋ねられますが、あまり考えずに、『冷ややっこを、ぽん、と置く』でいいんです。いつもの食卓がぱっと彩られますし、実際に使ううちに『次はこれに使おう』という楽しみが増えます。飾ってもらってもいいけれど、日常生活で使っていただけたら、それが一番嬉しいです」

試行錯誤の末にたどり着いた境地でさらにオリジナルを追求し続ける鯉さん。美しい絵付けに秘められた熱い思いに触れた気がしました。

※「第22回 黒髪山陶芸作家村 秋の窯開き」(11月20日~23日)は、新型コロナウィルス感染の拡大状況によって、WEB会場のみの開催になる場合があります。開催状況については、各参加窯元へお問い合わせください。

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