「青」に魅了される[有田×野老]展

秋の行楽シーズンも真っ只中、佐賀県有田町の佐賀県立九州陶磁文化館では2019年11月24日まで[有田×野老]展を開催中です。

九州陶磁文化館がゲストアーティストを招いて企画・開催する初めての展覧会です。ゲストアーティストに招かれたのが野老朝雄(ところあさお)です。この方のお名前、聞いてピンとくる方も多いのではないでしょうか? そう、2020年いよいよ開催される「東京2020オリンピック・パラリンピック」のエンブレム「組市松紋」の生みの親です。野老が生み出す幾何学的な紋様が、有田の伝統工芸「有田焼」の技術と見事なコラボレーションを果たしています。

《有田焼瑠璃百段階卍(陰)》《有田焼瑠璃百段階卍(陽)》
《藍染地獄建百段階卍(陰)》《藍染地獄建百段階卍(陽)》(壁面)

会場でひときわ目を引くこの作品、立方体が百段階に青の濃さを変えグラデーションをつくり一つの作品に収まっている様子は、立方体同士の間に落ちる影さえも計算されているような完全さを感じました。磁器独特の表面の質感や呉須の色合いにも魅入ってしまいます。さらには呉須(青色の顔料)の濃度を調整して百段階の色を作り出した根気と技術にも驚かされます。

《ARITAYAKI RHOMBUS WORKS》

青と白のパーツが一見複雑そうに一つの円を作るこの作品は、よく見ると3パターンのパーツだけで出来ていました。幾何学紋様の不思議さを感じる作品です。横から見たときの立体感も綺麗な作品でした。

本展覧会では九州陶磁文化館の貴重な収蔵品も展示されています。私が注目したのは、ショーケースのガラスにプリントされた野老朝雄と鈴田由紀夫(九州陶磁文化館館長)の言葉。これを一つひとつ読みながら回ると観賞をさらに楽しめます。他にも実際に触って動かして紋様を楽しめるコーナーがあり、つい夢中になって紋様を並べてしまいました。写真撮影できるので、作った紋様を記録に残すのも楽しいかもしれません。

デザイン・アート・伝統工芸の様々な視点から有田焼の新たな魅力に触れることができます。有田焼の敷居の高さや伝統の重さよりも、純粋にやきものの面白さを感じることができました。会期は残り1ヶ月を切りました。秋の有田散策も兼ねて、ぜひお出かけください。

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